(/--)/ ページ9
自分でも見事なまでにフラグを回収したのは自覚がある。
……こうなったら仕方ない。
平静を装って自然な会話をし、自然に別れる。
こないだの雰囲気にはもっていかない！
よし、これだ。
がんばれ私大丈夫できる。
『こ、ここここんにちは………』
まってめっっっっちゃ噛んだ。
もうムリ……しぬ…………………。
ポカンと私を見ていた九条さんは次第に肩を震わせ始めた。
堪えきれてないです、九条さん。
「ｸｯ…ｸｸｯ………あははっ」
『〜ｯ！！』
笑われて恥ずかしくてきっと顔は真っ赤だ。
冬だっていうのに暑くてしょうがない。
彼は一通り笑ったです後、いつもの笑みで挨拶をする。
「……ふふ、こんにちは」
『……こんにちは』
あまりしっかり見れなかった彼の、改めてその姿を確認すると、どうやら休暇らしい。
身バレ防止の変装の為に帽子、眼鏡、マスクをして、厚手のコートを着ていた。
雑誌のグラビアやステージ衣装より此方の方が距離が近い感じがしてなんかいいな、と思う。
……いや、そうじゃなくて。
『今日はどうしたんですか？』
一刻も早く私がものすごく噛んだ記憶を上塗りせねば……なんて謎の使命感に焚き付けられて会話を展開する。
彼はバックからごそごそと何かを取り出した。
それは2枚の紙切れであり、そこには上品そうなつづりの金文字と、背景は黒一色。高級感すんごい。
「前に君にもらったスイーツビュッフェチケット。今日は時間あるから行こうと思って」
そういえばそんなこともあったな、と思い出す。ケガして九条さん宅にお邪魔して、御詫びに渡した気がする。
姉さんが九条さんのファン時代に「天くんって甘いもの好きなんだって！」とはしゃいでいたのがもう、ほんっとに可愛くて、よく覚えていた。最近はもっぱら陸さん達IDOLISH7の話だからなぁ。いい傾向ではあるけど。
チケットも当時お店の取材をした時に、そこのパティシエールさんと仲良くなり、頂いたものだ。
頂いた当初は姉さんと行こうと思っていたけど、確か甘いもの好きって聞いたな〜と思い出して、渡した訳である。
……決して私も食べたかったとか、惜しいとは思ってない。決して。
あの時理ちゃんと連絡先交換したけど、ゴタゴタしてたから最近は全然連絡をとってない。……してみようかな、ランチとか、お茶とか。
あ、でもレッスンあるんだよね。迷惑かもしれない……。
なんてぽんぽん考えていたら九条さんからとんとん、と肩を叩かれた。
「一緒に行かない？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラディ | 作成日時：2019年5月12日 22時
