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八尺様7 ページ8

side:中原

「(なんもねぇな…)」

部屋に入って6時間以上経っている。
Aにはなるべく声を出すなと云われたが、一人で喋る趣味なんてねぇしそこは問題なかった。
新聞紙で目張りされた窓じゃ、あの女が来ているのかすら分からない。

コツ、コツ…

何だ?

コツ、コツ…

ノックする様なその音は、窓から聞こえていた。
瞬間、ゾワリと鳥肌が立つ。
月の光か、街のネオンか、外の光によって映し出されたシルエットは、俺を粟立たせるに十分だった。
特徴的な丸みを帯びた帽子の影。
あの女だ。

「っ…!」

暗い部屋の中で、唯一白を放っていた盛り塩の頂きが黒ずんでいるのが分かった。

「ぁッ…!」

不味い、思わず漏れた声に口を塞ぐ。
気付かれただろうか?

「(太宰の野郎…!)」

目張りに使われている新聞にちょっとした切れ目がある事に気づいてしまった。
昼間のこの部屋での太宰の行動を思い出す。
丁度、あの女がドアを叩いている手が、隙間から差し込む月明りと共に見えた。
もし、あの女があの切れ目に気づいて、此方を覗きこんだりしたらー?

”中也”

突然、聞こえてきた太宰の声。

”中也、大丈夫かい?無理せず、そこから出てくるといい”

「だっ…!」

待て。
あの声は本当に、扉の方から聞こえているか?
扉の方には何の気配も感じない。
彼奴なら気配を消すくらい簡単だろうが、今それをする理由はあるか?

”如何したんだい、中也?一人は怖いだろう?こっちに来てもいいんだよ”

違う。
よく似ているが、アレは、太宰の声じゃない。

『私達は中原さんを呼ぶことも話しかけることもありません』

云われたAの言葉を思い返した。
確信する。
アレは、太宰の声じゃないと。

ドンドンドン…
ドンドンドン…

穏やかだったノック音が、突然荒々しく豹変する。
俺が、声の正体に気づいたからだろうか?

ぽ、ぽぽっぽ、ぽぽ、ぽ…

あの声が聞こえてきた。
自分の心臓の音が異様に煩い。
静かな部屋の中じゃ、自分の呼吸すらあの女に聞こえてしまうような気さえする。
次の瞬間、俺はヒュッと息を飲んだ。

ぽぽぽぽ、ぽぽっぽ、ぽぽ…

あの女が、新聞の切れ目に気づいたー。
切れ目から覗いた目は、三日月を描き、血走った眼で俺を見ていた。
俺を見つけたことが嬉しいのか、あの半濁音の声が笑っている様に聞こえる。
壁際に寄ろうにも、身体に力が入らない。
畜生、情けねぇ…!

『獅子王・銀零ー!』

恐怖を切り裂くように凛とした声が響いた。

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をたく - 夏目友人帳とコラボでこの作品出してほしい (2020年1月3日 4時) (レス) id: cd1a846ab2 (このIDを非表示/違反報告)
光牙 - 怪奇症候群を思い出すなぁ... (2018年8月16日 20時) (レス) id: bfcb6bfd1c (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - ルルさん» コメントありがとうございます!猿夢はグロいですよねwしかも、元ネタ読むと自分も同じ夢を見るという噂が…。まぁ、私見てないんですけど (2017年8月31日 6時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - ヒャ、猿夢はトラウマです…うぅ…(長い間見てなかったです。すみません) (2017年8月30日 5時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - にぃさん» ありがとうございます! (2017年8月27日 9時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:amato | 作成日時:2017年8月16日 22時

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