【文スト】異能力？いいえ、霊能力です参

手鏡5 ページ46

「森さん、待って！彼女は操られてるだけなの！！」
「…ほう？という事は、原因人物は、我々マフィアに喧嘩を売った…という事かな」

取り敢えずは、森さんは銃をアンドレに返した。
アンドレの銃だったんだ…。

「何とか出来るか？」
「彼女に暗示をかけている物があるはず。それを壊せば…」

視線を再び樋口さんに戻す。
手を撃ち抜かれたにも関わらず、向けられている銃口は震えもしていない。
傷口から滴る血が、更に床を汚していた。

「今日も、依頼で樋口さんと同じ術に掛った女性を元に戻してきたとこなんだけど…」

その女性とは比べ物にならない程、深く術に取り込まれている。
この術は、自分に対する劣等感が強いほど引き込まれやすい。
あの女性はまだ多少自我を保っていたけれど、樋口さんは完全に術に洗脳されている。
呪術に分類されるこの手の精神操作術は、決して強い術ではないし、術が対象者に浸透するまで時間がかかる。
けれど、一度術に取り込まれれば、彼女の様に自我を失う。
解く方法は、彼女自身の手で術の核となっている物を壊すこと。あの女性は、まだ自我があったから、説得と少しの無理強いで何とかなった。

「彼女の手で、壊す必要があるんだね」
「…はい」

壊した後も問題だ。
洗脳されているとはいえ、その間の記憶は術が溶けてからも残る。
視線を床に移せば、血の海に溺れている依頼者の姿…。
もてなしてあげたと言ってた、彼女の言葉が脳内でリフレインした。

『術者が同じなら、核となっている物も同じはずだ』
「…手鏡」

この術の特徴から、核を肌身離さず持ち歩いている事は確かだ。そうしなければ、術を浸透させることができない。

「A！鏡ってコレのこと！？」
「エリス！」
「やめろ！！」
「当たらないわよ、そんなの！」

止めようと放たれた銃弾をものともせず避け、樋口さんの片手に握られていた鏡を奪い取った。

「エリス凄い！…森さん、ありがとう」

エリスは森さんの異能。
そう考えれば、これは森さんが仕組んでくれたんだろう。
隣に視線を向けて礼を言えば、微笑みで返された。
こういう時、大人の人はズルいと思う。

「エリス、その鏡こっちに投げて！」
「分かったわ！」
「やめろ、A！！」

エリスから投げられた手鏡を受け取って、守ってくれていた作之助の前にでる。

「やっと、私に殺される覚悟ができましたか」
「いや全く」

一か八か。
失敗すれば、最悪私が死ぬ。
彼女の銃から、私に向けて銃弾が放たれた。

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