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二体様7 ページ36

side:谷崎

「銀零…さん…?」

もしかしたら、あの人形じゃないかもしれない。
太宰さんから銀零はライオンの姿だと聞いていた。

ヒタヒタ…

違う。
人が歩く様な足音だ。
あの人形が来たんだ。

「兄様、あれ…!」

ナオミの声に、足音に警戒しながら差された方を見れば、窓の両端に置いた盛り塩が黒ずみ崩れていた。

「ナオミ、僕が合図したら二階に逃げるんだ」
「そんな…!」

Aさんからの使いがまだ来ない以上、僕がナオミを守らなければ。

ガタガタガタガタ!!

「…っ」

扉が激しく振動する。
僕が扉を開けて、人形を取り押さえる。その隙にナオミを逃がそう。
ドアノブに手をかけた。

バリン!

「きゃああ!!」
「ナオミ!?」

後ろを振り返れば、人形がナオミの首を絞めている。
扉の向こうにいる人形は囮だったのか、盛り塩が効力を無くした窓を割って侵入してきた。

「にぃ、さま…っ」
「ナオミを離せ!!」

ナオミの首を絞める人形に体当たりするも、首を絞める力はビクともしない。

「兄様、後ろ!!」
「な…!」

ナオミを助ける事に夢中になっていれば、扉が壊れ、もう一体の人形が侵入してくる。

「クソ…!」

なんとか、ナオミだけでも逃がさないと。
少しでも目くらましにならないかと細雪を発動するも、人形はまっすぐ此方に向かってくる。
僕の異能がもっと、戦い向きだったら違っていただろうか。

『小僧、この札を使え』
「!」

突如部屋に響いた声。
反射的に、目の前に舞った二枚の札を掴み、一枚をナオミを苦しめている人形の頭に押し付けた。
瞬間、人形の身体から黒い影が湯気の様に抜け出し、白銀色のライオンがその影に喰らい付いた。

『気を抜いている暇はないぞ』
「は!…ぐっ」
「兄様!」

一連の出来事に気を取られているうちに、もう一体の人形から意識を反らしてしまっていた。

「ああああ!」

両手を押さえつけられ、喉に人形が噛み付いた。
このまま抉られるのではないかと思う程の力は、どんどんと強くなっていく。

「兄様からどきなさい!」

ナオミが、押さえつけられた僕の手から札を取り人形の額に押し付けた。
すると、さっきと同じように黒い影があがり、ライオンがそれに喰らい付いた。

『不味い。こんな薄い魂を万食した処で、腹の足しになぞならんな』
「貴方が、銀零…?」

ナオミの問いに、返事つの心算なのか一瞥し、白銀の煙となって姿を消した。
部屋の中には、ただの人形となった器が2つだけ残った。

空き家にて→←二体様6



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をたく - 夏目友人帳とコラボでこの作品出してほしい (2020年1月3日 4時) (レス) id: cd1a846ab2 (このIDを非表示/違反報告)
光牙 - 怪奇症候群を思い出すなぁ... (2018年8月16日 20時) (レス) id: bfcb6bfd1c (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - ルルさん» コメントありがとうございます!猿夢はグロいですよねwしかも、元ネタ読むと自分も同じ夢を見るという噂が…。まぁ、私見てないんですけど (2017年8月31日 6時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - ヒャ、猿夢はトラウマです…うぅ…(長い間見てなかったです。すみません) (2017年8月30日 5時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - にぃさん» ありがとうございます! (2017年8月27日 9時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:amato | 作成日時:2017年8月16日 22時

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