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結局あのあと小瀧に何も言えないまま、帰宅してきた。

何度か話しかけるタイミングはあったけど、それでもこの手があの肩に触れることは無かった。

「あーあ……」

クリームがかった色をした壁を見つめて、吹嘘した。

ソファに座ってちょっと目を閉じて、考えてしまうのはこの間のことばかり。

小瀧の背中を見たって、横顔を見たって、あの時のことばかりが頭を過ってしまう。

あの時、小瀧はなんで泣いていたのか。

揺れる大きな瞳を思い出して、ぐっと息が苦しくなった。

今日、小瀧になんと声をかけるべきだったのか。

冷たい短い言葉を思い出して、もっと呼吸が少なくなった。

「……」

“しげはのんちゃんのことどう思ってるのかって”

ふと思い出した神ちゃんの綺麗な声に、思考は更に乱された。

わからない。小瀧のことを、どう思っているか、なんて、わからなかった。

初めはただの会社の後輩で、そのあとはなんか犬みたいなんて、それから俺にとって大事な存在になって。

それから、その先は、どうなんだろう。
不可思議で、理解不能な感情。

何故かわからないけど、小瀧の飾らない笑顔と、誰も知らない雄の顔、そのふたつに抱く感情を、俺は知っているような気はしていた。

でもその中に含まれた感情の姿はぼやけてしまって、はっきりとはわからない。

「……駄目、」

結局答えは、出なかった。

どこを見つめても見える景色は変わらなくて、拳を握っても答えを掴まえることはできなかった。

机の上に置いた置き去りの鍵が光を受けて、無差別にスポットライトを放つ。

「なんもわからん。」

絞り出して、ソファに身を投げて、目を閉じた。

ぼやけていた感情は、乱反射した人工的な光に粉々に砕かれてしまった。

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あどま(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます!私も書き終わったー!という達成感と共に少しの寂しさを感じてます…。番外編はなにか書きたいなと思っているので待っていてください…! (6月20日 22時) (レス) id: 59dc4622d3 (このIDを非表示/違反報告)
あどま(プロフ) - ペンギンさん» コメントありがとうございます!素敵なお話と言って頂けて頑張った甲斐があったな…と感じてます笑番外編書き終わり次第投稿したいと思っていますので楽しみにしていただけると嬉しいです! (6月20日 22時) (レス) id: 59dc4622d3 (このIDを非表示/違反報告)
あどま(プロフ) - ゆん太さん» コメントありがとうございます!初作品、至らない点が沢山あったと思いますが、大好きだと言って貰えて本当に嬉しいです!次回作も読んでくださると嬉しいです…! (6月20日 22時) (レス) id: 59dc4622d3 (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話をありがとうございました!よかったら今後2人がどうなるかなどの続きや番外編も見てみたいです!これからも楽しみにしています! (6月19日 2時) (レス) id: c34058457d (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも更新を楽しみにしていた大好きな作品だったので、完結して嬉しい反面、寂しい気持ちもあります(;_;)もしよかったら番外編など書いていただけたら嬉しいです。次回作も楽しみにしています! (6月19日 0時) (レス) id: 63b1f880fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あどま | 作成日時:2019年3月9日 21時

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