_三十三訓 ページ34
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「頭の熱は引いたか?」
「…………」
「悪かったって。だから逃げるな」
Aの姿を目にした瞬間高杉は元来た道を戻ろうとクルリと去ろうとした。
自身に背を向ける高杉を追いかけて隣を歩く。
「反抗期の弟を持って姉さん悲しい」
「勝手に悲しんでろ」
「えッ」
自分に呆れている高杉を知ってか知らずか話を移そうと口を開く。
「にしても我ながら凄いと思うよ。チャペルに乗り込むだなんて、地球のどらまと言うやつの定番なんだろう?」
「定番じゃねーが、そんなのどこで知った」
「昔松下村塾に行った時に見たんだ。“アイツ”に勧められてな」
無言の高杉だが少し間を置いてからAを呼んだ。
「ガキん時から思ってたが」
「なに?“小さき頃からずっと好きでした”みたいな告白パターン??少し待て、まだ心の準備がッ…」
「な訳ねーだろ」
何やら真剣な表情をする高杉に一度黙る。彼女が落ち着いたのを見てから高杉は口を開いた。
「お前、何を隠してる」
「………………」
コツコツと規則正しい音を鳴らしていたAのヒールがピタリと止んだ。
そんな様子に高杉は目を鋭くさせて同じことを聞くと、Aは口を噤んだ。
「……一年に二,三度訪ねてくるようなお前が戦争前、音沙汰なしに来なくなったのも」
「…………」
「こうして姿、口調、性格をも変えて宇宙海賊やってんのも。何か都合の悪い事でもあんのか?……A」
十年ぶりの再会から初めて高杉は姉である彼女の名を口にした。
下を向いていて見えなかったAの表情がハッキリと、残された右目に映る。
「ッ………」
「…話さなければならない時が、きっといつか来ると思ってた……」
悲しいく、寂しそう青い瞳が揺れる。
宇宙に散りばめられる無数の星たちが良く見えるガラス張りの窓の前に立ち、高杉の方を振り返って形の良い唇を動かした。
「___…」
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水渚桃華 - 七瀬未来さんへ まだ少ししか読んでないですがこの作品面白いです。更新待ってます。 (2020年2月20日 17時) (レス) id: 3a85905bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作成日時:2020年2月18日 19時