煙 草 と ラ イ タ ー 。《 紫 》 ページ2
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崇裕くんが忘れていった煙草とライター。
追い掛けて持って行ってあげようか、
なんて考えはすぐに掻き消されて。
いつも崇裕くんがそうしてるみたいに
ベランダに出て、ライターでぱちぱちと音を立てる。
口に含んだ煙は、いつものキスの味。
『崇裕くんの味だ。』
ベランダの柵にもたれかかって、
薄暗い夕方の街を眺める。
｢なにしてん｣
いつの間にか戻ってきていた崇裕くんが
私の隣へやってきて同じように柵にもたれかかった。
『これ取りに来たんでしょ』
｢当たり｣
私は崇裕くんに煙草とライターを重ねて渡す。
手が重なった瞬間、私は崇裕くんの手首をひいて、
まだ煙の残る私の唇でキスをした。
いつも冷静な崇裕くんが、驚いてる。
｢…ありがとう｣
崇裕くんはポケットに、渡されたそれを入れた。
『崇裕くんはいつもずるいんだよ。こうやって私にキスするんだから。』
頬杖をついて、
柔らかい眼差しで崇裕くんは私を見ていた。
｢なぁ。不味いやろ、もうやめとき。｣
『でも崇裕くんの味がするから。』
｢そんなに俺の事好きなん｣
『とか言う崇裕くんのほうが私の事好きなんだよ』
困ったように頭をかいた崇裕くんは、
予定の時間が迫ってきたのか
私に背を向けて部屋に戻ろうとした。
｢あ、忘れもん…｣
そう言って彼は私にキスをして、頭を優しく撫でる。
行ってきますの代わりに優しく微笑んで、
崇裕くんは出かけて行った。
『だから、ずるいんだってば…。』
火照った顔を誤魔化すように、
また崇裕くんの味がする、その煙に口付けをした。
．
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作者名：檸檬 | 作成日時：2020年5月31日 0時
