貴方の隣で。《紫》 (ページ10)

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＿＿＿＿今日午前、男子大学生が

自身の通う大学の美術室で

遺体となって発見されました。

警察の調べによると、

25日に都内で起こった殺傷事件の現場に

酷似しているとの事で、

二つの事件に何らかの関連性があると見て

捜査を続けています＿＿＿＿

第一発見者として私と神山くんが

事情聴取され、

それが終わる頃には全ての授業の

休講が発表された。

被害者の彼と面識のあった人達が

パニック状態のまま、

お通夜へ向かう為に自宅へ帰っていった。

警察がバタバタとそこらを走り回る中、

三人の内、口を開いたのは重岡くんだった。

｢取り敢えず、ここ出よ…。｣

｢…そやな｣

三人で向かったのは、

私達がよく使う大学から近い喫茶店。

『珈琲をひとつ、ホットで。』

｢俺はアイスのストレートティーで。しげは？｣

｢……｣

『重岡くん』

｢え、ああ、俺は、コーラで…｣

暫くは誰も口を開かなかった。

それぞれのドリンクが届き、

それでもまだ誰も話し始めない。

｢俺ちょっと、御手洗行ってくる。｣

神山くんが席を立った。

『うん』

隣の重岡くんは、

コーラをストローで吸い上げる。

｢あんさ、｣

重岡くんは重い口を開いた。

｢お前ら、なんでそんな冷静なん、しかも現場見たんやろ、｣

静かで重たい声だった。

『近くに犯人が居るということだよね。』

｢…それは、確定はしてへんやろ。もしあの事件と同一犯やったとして、前回は東京や。｣

『じゃあ重岡くんは何を怖がってるの』

｢何をって、｣

神山くんが戻ってきて、

重岡くんの話は止まった。

｢ごめん、話止めてしまった？｣

｢いや、別に、大した話じゃないから｣

またあの嫌な空気が流れた。

確かに神山くんは、

何を考えているのかよく分からない。

何時だって冷静で、

何時だって正しい行動をする。

" 彼はね、隠すのが上手い人間なんだよ。"

＿＿隠すのが、上手い人間。

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