貴方の隣で。《紫》 (ページ22)

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｢ではっ！乾杯～！｣

お兄ちゃんの通る掛け声でグラスが3つ、

ぶつかり合う。

初めて大学の外で会う濵田教授。

いつもと変わらないはずなのに、

周りの空間が違うからなのか

凄く不思議な感覚だった。

｢そのスーツ似合ってるよ。さすが営業部だね。｣

｢やろ～？実はこのスーツAに選んでもらってん。な？｣

『うん。今日着てくれてるの気づいたとき嬉しかった。』

教授とお兄ちゃんの距離は本当に近い。

教授を濵ちゃんと呼んでいる時点で

何となくそんな気はしていたけれど、

想像していたよりも、もっと近かった。

それは、教授が時々関西弁混じりになったり

目尻に皺が出来るくらい笑ったり、

私の見たことの無い教授を

次々に見せてくれるからなのだと思う。

｢濵ちゃんってさ、教授やってるけどほんま若いよな！他の教授っておじさんばっかりやんかぁ｣

｢まあ確かに、年齢層は高いね。｣

ふたりの会話が弾んで、

私は割って入れなくなってはいたけど、

眺めているだけで充分に面白かった。

｢照史くん今、何処に住んでるの？｣

『あ、私にも教えて、今度行きたい。』

｢ああ、Aにはざっくりとしか教えてへんかったっけ！｣

お兄ちゃんはごめんごめん、

と笑い声をあげながら携帯を開き、

すぐに私にメールで住所が送られてきた。

｢Aから濵ちゃんにも送っといて｣

『え、あ、』

｢あ、もしかして連絡先交換してなかった？｣

｢じゃあ交換しよう、Aちゃん。｣

教授はポケットから

紺色の手帳型ケースに収まったスマホを出して

QRコードを私の前に出てきた。

『いいんですか』

｢どうぞ｣

｢じゃあ俺も！｣

私の携帯画面ではハッキリと、

新しい友達として"濵田崇裕"が追加されていた。

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