貴方の隣で。《紫》 (ページ17)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:67,816 hit

＊ページ17

.

｢A～、こっち｣

『ごめんね、待たせちゃって』

｢全然大丈夫やで、な？神ちゃん｣

｢うん。｣

今日は3人でショッピングに行くらしい。

本当に分からない。

どうしてふたりは私なんかと

出掛けたいなんて言ってくれるのだろう。

｢Aお腹空いてる？｣

重岡くんが聞いてくる。

『朝軽く食べただけだから、少し』

｢ほ～、じゃあどっか店入るかぁ｣

重岡くんの話し方はいつも、

どこか気の抜けた感じで

少し宙に浮いてるんじゃないか、

なんて思ったり。

｢はい、いいよ｣

神山くんがドアを開けてくれる。

本当に紳士的な人だ。

入った創作料理屋さんは

暖かくて落ち着く雰囲気の店で、

3人の話も盛り上がった。

｢え～、神ちゃんは結婚願望とかあんの？｣

｢まぁ、それなりに？｣

｢Aは？｣

『え、』

この質問はいつも私を困らせる。

『無い、かな…』

｢へぇ、そうなんや。ええやん｣

重岡くんはきっと無意識なのだろう。

でも、最後の｢ええやん｣の一言に

私は救われた。

｢俺もなぁ、結婚願望とか全然そういうん無くてさぁ｣

｢ずっと言うてるよな｣

神山くんは烏龍茶を一口飲む。

｢まぁ、淳太の結婚式はめっちゃええなとは思ったけどな｣

『お友達？』

｢んー、俺らが小さい頃からよく遊んでくれてた近所のお兄ちゃんやな。
この前クリスマスに式挙げてさぁ、神ちゃんとふたりで東京まで行ってな？
ほんっまあれは羨ましいわ｣

『……重岡くんも行ったんだ』

｢え？うん｣

神山くんの顔を見れば、

少し苦い顔をして俯いていた。

どうしてそんな顔をするのだろう。

神山くんは、

何か知っているのだろうか。

あの事件に、

何か関わっているのだろうか。

.