13話 ページ15
沈黙を最初に破ったのは柚木さんだった。
「 先生、俺ね…
月の石持ってるんだ！」
ついに怪我の事や弱音を話すのかと思いきや、全く違う言葉で、先生は拍子抜けしていた。
「 俺が4つの頃の夜だったかな、目の前に落ちてきたんだ 」
嬉々と話しながらポケットをゴソゴソと漁り、彼の手のひらに出てきたのはこじんまりとした変哲のない石。
「 ホンモノって言ったら信じる？」
「 ……いや 」
「 あはっ、だよねー 」
そんな先生の返事がわかっていたのか、にぱっと咲き誇るような笑みを見せる柚木さん。
しかし、彼はホンモノだと信じているそう。
いきなり黒板の方へ駆け出した柚木さんに驚きを隠せない先生。
いきなりチョークを取り、何を書いたかと思えば、月と地球の距離だった。
彼の言う月の石は38万キロの旅をして自分の手元へきたんだと。
こんな小さな石でもこんな遠くまでこれる、俺の宝物。そう笑う柚木さんは先程 " 16時の書庫 " で土籠先生に秘密を知りたいかと聞く花子さんにそっくりだった。
「 …柚木、今は月じゃなくてお前の話を 」
「 あー！見て見てー！」
「 聞け 」
少し怒りの表情を見せ、柚木さんに言葉を投げかけるが、聞く耳持たず。
今日はもう月が見えるよ。と開いた窓の傍で無邪気な笑みを浮かべながら言う。
先生が綺麗に巻いた包帯は解け、救急キットを片付けるために少し目を離す。
「 先生は月に行きたいって思った事ある？」
「 あ？」
救急キットを抱えたまま窓の方を振り返るとそこには窓枠に立ち、身を乗り出す柚木さんがいた。
先生は目を見開いて、片付けていた救急キットを手から離し、柚木さんに手を伸ばした。
「 俺はあるよ、月ってでかくて綺麗じゃん
だからかな…、なんか、すげーいいとこな気がしたんだよね 」
しゃがんで自身の宝物だと言っていた月の石を本物の月にかざしながら言葉を発した。
「 危ねェ！
さっさと戻って来い！」
立ち上がりながら声がする方向に顔を向ける柚木さんはどこか大人びていて、体をこちら側に向けてまたしゃがむと、伸ばした先生の手をぱしっと叩いた。
「 ねー、先生
先生は俺の事心配してくれてんだよね？」
「 …ああ 」
「 俺の力になりたいって言った 」
「 そうだ 」
顔を俯かせていたため、分からなかった表情だが
「 なら、いっこだけワガママ聞いて 」
そう言い顔を上げた柚木さんの顔はしっかり年相応に見える顔をしていた。
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人参ぱんつ(プロフ) - yamiさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません、とても嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張らせていただきます！ (2020年8月21日 18時) (
レス) id: a7aebfbb6e (このIDを非表示/違反報告)
yami - 凄く面白いです！更新頑張って下さい。 (2020年7月28日 12時) (レス) id: 0abcc7321c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：人参ぱんつ | 作成日時：2020年4月22日 1時
