７話 平和な公園 ページ8
少年探偵団とサッカーをしていい運動になったと思う。しかし、さすがに第二ラウンドは勘弁してほしいと言って、少し離れたベンチに１人移動した。
「コナン君！そっちボールいったよ！」
「光彦！ゴール守れ！」
サッカーゴールのあるエリアでは、おやつ休憩を終えた少年探偵団らがサッカーを再開している。その隣の遊具のエリアでは、小さな子供達が遊んでいる。体の大きな子も混じっているから兄弟で遊んでいるのだろう。芝生のエリアでは親子連れや老夫婦が木陰に座って涼んでいる。
そんな平和な光景をしっかり目に焼き付ける。
こんなにしっかりと日常風景に見入ったのはいつぶりだろうか。このアニメの世界に来てからはもちろん、死ぬ前も忙しくてそんな機会はなかった。
当たり前に子供が遊べて、それを僕は見守っていて……そんなささやかな願いが死んで初めて叶うなんてなぁ。嬉しいような哀しいような。いや、本当に見たかった景色とは少し違うから、これは虚しいんだろうな。
風見さんのスーツ姿を見て、死んだ後悔をうかべ、子供達を見て、彼女が生きていればと夢想し、今生きている自分の姿を見て、これまでの努力を無意味に感じる。
そんな負の感情の連鎖に浸るより、平和なこの世界を観察して虚しさを覚えている方がよほど健康的なのかもしれない。たとえ判然としない僅かなものだったとしても、目の前の光景を見て嬉しいと感じたのだから。
こんななんでもないものの為に風見さんたち警察官は頑張っているんだろうな。日々誰かのために働いて、その成果が目の前にあって、ちゃんとその事実にも目を向けることができて。余裕もなくただ信念だけで動いていた僕には出来なかったことだ。それってなんだか、
『羨ましいなあ』
「何が羨ましいの？」
『へあ！？』
唐突に聞こえた声に驚きベンチから落ちてしまった。哀ちゃんいつからそこに‥‥。
「ちょっと大丈夫？」
『うん平気。それよりどうしたの？』
「疲れたから休憩中よ」
そう言われ、ベンチに座り直しながら子供達の方に目を向ければ、コナン君対その他、なんていじめみたいな割り振りされていた。
「そういえば、さっき聞きそびれたんだけど」
プロ並みの動きをするコナン君から視線を外し、哀ちゃんに顔を向けた。数瞬迷うそぶりを見せたが、すぐに覚悟を決めたみたいだ。
「数住さんのこめかみの傷、銃創よね。しかもそんなに古くない。
本当にただの記憶喪失なの？」
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