帰り ページ33
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帰り道は万次郎と歩いて帰った。
途中で、母親から電話がかかってきた。
『もしもし』
「アンタ今日帰りが遅いのね。」
『お母さん家に居るの?』
「わたしの家に居て悪い?」
『いや、そうじゃないけど…。』
「こんな時間まで男遊び?まあわたしの子だから仕方ないか。」
『何が言いたいの?』
声が震える。
「わたしと小林さんの関係知ってるでしょ?」
小林さんは店のお客さんで母親の彼氏だ。
「もうすぐ二人で住むんだけど、アンタがいると邪魔なのよ。もう大人なんだし、高校卒業後は家出ていくんでしょ?ならそれを機に親子の縁も切らない?」
悲しくもなんともないが何故か涙が出てきた。
『わかった。今までありがとう。もう家には帰らないね。今日か明日に荷物取りに行く、その時に鍵も返す。』
それだけ伝え、電話を切った。
「大丈夫か?」
『わかんない…』
勝手に溢れ出る涙を止めようとしても止まらない。
母親はわたしの誕生日すら覚えてなかった。
母親としての期待なんかしてなかったが、何故か涙が出てきてしまう。
『万次郎、家なくなっちゃった』
と言いながらヘラっと笑う。
「うん」と言いながら抱き締めてくれた。
『母親に捨てられちゃった』
涙の次は笑いが止まらなくて涙と共に笑ってしまう。
「無理して笑わなくていいから。俺ん家おいで?」
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作者名:もあ | 作成日時:2021年6月9日 12時