気まずい再会 ページ26
in side
連続で響いていた音は鳴り止み、夏祭り終了のアナウンスが会場に流れる。暫しの間花火に魅了されていた各々が 余韻に浸りながら帰り始める。もちろん俺らも例外じゃない。
山田と2人で見る初めての花火、すげえ綺麗だった。この夏休み、好きな人と沢山の思い出を作れて 今まで生きてきた中で一番最高の夏休みだった。
この約3週間に思いを馳せつつ、山田と俺は周囲の人の流れに任せながら その場を後にしようとした
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「伊野尾くんじゃん、久しぶり」
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急に後ろからトン、と肩を叩かれると共に聞こえたのは低くて深みのある声。
瞬間にフラッシュバックした あのアルファとの記憶。
振り返らずとも相手が誰か一瞬で分かった。
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『…、たかき、？』
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高木「ん、覚えててくれたんだ」
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立ち竦む俺の前に姿を見せたその人が視界に入るだけで胸はズキズキと痛み、過去の惨めさや辛さが鮮明に蘇ってきて、言葉が詰まる。
「伊野尾ちゃん？どうしたの？」
『えっと…』
山田にもまだ話せていない彼との出来事。どう言っていいのか分からなくて なんとも言えない間が空くばかり。
高木「高校の時の友人です。ね、伊野尾くん」
『ん、あ、うん…』
反射的に返事しちゃったけど、友人、なのか？
てか、何よりこの状況すげえ気まずいんだけど。さっさと逃げ出したいくらい。
山田とも高木とも目を合わせられず、俯くことしか出来ないままの俺を他所に2人の会話は進んでいく。
「はじめまして、山田です」
高木「高木です」
「伊野尾ちゃんのお友達なんですね」
高木「とは言っても2年前の話だけど。偶然見掛けたから声掛けちゃいました。山田くんは？伊野尾くんの友達？」
「友達というか…同じ高校の先輩で、」
山田から、言っていい？というように向けられた視線を感じると共に生まれる少しの沈黙。
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高木「… そういえばさ、」
微妙な空気が流れる中、一番に口を開いたのは高木だった。何を言い出すのかと内心緊張していたその時、俺の首筋に高木の顔が近づき、すーっと息を吸う音が聞こえる。
『ちょ、何して、』
高木「匂い、変わったね。番出来たの？」
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…え？
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高木「良かったね、新しいアルファ捕まえられて。あん時は毎日俺にフェロモン向けてきてたのが懐かしいね。」
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『そういうわけじゃ、』
高木「仕方ないよ」
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高木「オメガってそういうもんでしょ？」
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作者名：猫 | 作成日時：2023年3月1日 20時
