先輩、俺のオメガでしょ？ (ページ14)

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身の上話ページ14

ym side
それは高校1年の冬、学校へ向かう途中のことだった。

「私、あなたを見た瞬間好きになっちゃったんだ。あなたが運命の人だって分かるの。」

急に話しかけてきた可愛めの女の子。制服の違いから他校の生徒なのは分かる。

一目惚れしたんだって告白されたけど話したことも無い上にその頃恋愛に興味がなくて断ったところ、豹変しやがった訳で。

俺の後ろを付きまとったり、待ち伏せしたり、挙句の果てには路地裏で無理やり番わせようとしたり、付き合ってくれないなら死ぬとか言い出したり。

『両親には、』

両親？あのオメガ女からのストーカー行為で精神的に参ってた時、"下手にβやαとくっ付くよりもΩと一緒になった方がいい"とか "Ωと番ってαの子を産んでもらえ"とか言って全く俺の話は聞いてくれなかったな。警察でさえも"相手が運命って言ってるならそうなんだろう、君が運命に気付いてないんじゃない？"って取り合ってくれないし、マジで勘弁してくれっていう。

結果的には、俺が高校2年になってすぐの頃、その女が親の転勤で学校を辞めたから何とか解放されたんだけど、周りの大人達には本気で失望した。他人に頼るだけ無駄だって思い知ったよ。

ちょうど女が辞めるのと同時期に親も仕事で海外に行くことになって清々したっけな。

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『…そっか、そんなことが。オメガのせいで辛い思いしたんだね、』

膝の上に置いていた俺の左手は伊野尾ちゃんの両手で包み込まれる。その温もりに俺の固まった心が少しずつ解されていくような気がした。

『ごめんね、俺もオメガなのに… 』

「そうだけど、伊野尾ちゃんは俺の、」

『運命の番、だから？そんなのに縛られなくていいよ。山田には、本当に心から愛した人と幸せになってほしいし、そこに第二性は関係ないよ』

親身になって聞いてくれた人も、運命や第二性に縛られないでいいと言ってくれた人も初めてで。

オメガとはもう二度と関わりたくなかった。

でも、伊野尾ちゃんは＿＿

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『俺のせいで山田を苦しめたくないし … 学校の中でも、なるべく会わないようにするから、ね？』

会わないようにする？ただでさえ学年が違って接点が少ないのに更に会わないようにするって…それは、嫌だ。

『じゃあ、俺、授業行かなきゃ。ちゃんとゆっくり休むんだよ？』

「まって、伊野尾ちゃん！」

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ガラガラと扉の閉まる音がする。
伊野尾ちゃんの姿はもうそこには無くなっていた。