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「今日も言えなかった」
数日前の話だ。
任務が終わって寮に戻ると、廊下で硝子と出会った。硝子が放つその言葉を聞いて、私は感傷的になってしまう。
「硝子だけが思い詰めることはないよ、私だって伝えられていない。」
「いつまでも隠し通すわけもいかないだろ」
「そうだね、いつか伝えないといけない。」
彼女に伝えないとならないこと。それは彼女と共に任務へ同行した補助監督の粟井さんについてだ。
粟井さんは、あの任務で亡くなった。
硝子が現場に着いた時には、もう息がなかったと言う。
彼女には粟井さんの話は濁してあるが、いつの日か伝えねばならない。私は彼女の悲しい顔を見たくなかった。硝子だって同様。
私たちが思い悩んでいた所をみて、悟が「だああ面倒くさ!二人して辛気臭!もう俺が言ってやろうか!?」と言ったので、私と硝子で、は?と低い声を出すと悟はしばらく黙った。悟が出てくるとろくな事がない。
しかし、私たちもずっと伝えなければならないと何度も何度も思っていて、未だに伝えられていない。
「このままだと先生が伝えることになると思うんだけど」
「…それの方が良いのかもしれないね。」
「それじゃダメだろ」
「でも私たちでは伝えられないだろう?」
そう言うと硝子は黙ってしまった。硝子だって色々考えているんだ。伝え方、伝えるタイミング、彼女の心の状態。
「きっと、時間が解決してくれるよ。」
私にできることは、ただ彼女を支えることだけ。だから彼女の家の事も勝手に手を回した。弱さから逃げた結果だ。
「時間が解決してくれるって…お前がそうだったから?」
過去を促すその言葉で前に愛した人のことを思い出した。もう婚約を決めていた人だ。
そんな人を亡くした当時の私はこの世が終わるような喪失感に襲われていた。しかし、そんな気持ちも時間が解決してくれた。
「ああ、そうだよ。時間が悲しみを忘れさせてくれる。」
忘れさせたんだ、時間が。
「…はぁ、どうだか。」
「…オマエさ、元カノとあの子照らし合わせてるんじゃないの?前は守れなかったから今の彼女は守りたいって。
そうやって時間に任せっぱなしにして、ずっと引きずってんだよ。」
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rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時