ヒーローになりたい少女。【相澤消太】 (ページ11)

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１１．笑顔ページ11

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『お母さんが入院して、学校から帰って「ただいま」って言っても、何も返ってこないの。

「おかえり」も「早かったね」も。

ただ自分の声が消えていくだけ。家に帰りたくないの。

だから時間ギリギリまでお見舞いに行ったり、働いたり。そうして寂しさを和らげるしかなかった。』

ひとつだけ、引っかかった。

「………働いたり…？お前、中学生でバイトしてたのか？」

するとAは慌てたように。

『あっ、いや、これは言葉選びを間違えたっていうか、比喩みたいな、、えっと、』

Aは嘘をつくのが下手だな、昔から。

「嘘はやめろ。話せる範囲で本当のことを教えてくれ。」

『先生…、消太くん、引かないで聞いてくれる…？』

「…あぁ、」

そういうとAは諦めたように話してくれた。

『やりたくなかったんだけどね、この歳でお金を稼ぐって大変でさ。

　お母さんの入院費も、学費もかかるし。

　…だから汚い仕事をするしかないんだよ。

　みんなが友達と楽しそうにマックやパンケーキ、タピオカとか食べてる時、私は、わたしは…

　っ、うっ、ぅぁあああああああああああっ』

いつの間にか俺はAを抱きしめていた。

その後は言わなくても察した。

この歳で、いろいろなことを背負って、どんなに辛かったか。

どんなに苦しかったか。

数年前まではお父さんとお母さんと笑顔で普通に暮らしていたのに、急に待ち構えていたのは崖。

きっとこの歳の俺でも乗り越えられない。

なのに、こんな小さな体で。

『嫌だった、知らない男の人に触られたのも、奪われたのも、全部全部嫌だったの。

　でも、他にお金稼ぐ方法がわからなくて…！

　入院すれば、またお母さんの笑顔が見れるって、前みたいにまた暮らせるって信じて、頑張って頑張って、頑張ったのに……ｯ

　それなのに、お母さんがもうすぐで死んじゃうの。

　もう嫌、私、穢れちゃったしみんなとお友達になれる資格なんてない。

　どうしよ、嫌だ、せっかく初めての友達できたのに、離れたくないよ………！！』

泣いているAを抱きしめる腕に少し力が入る。

俺が知らないところで、Aが苦しんでいた。

何もしてやれなかった自分が情けなくなった。

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