人質【3】 (ページ9)

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Ep.１０３ページ9

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「───先生は、きっと誰も殺してない」

誰もが怪訝な表情を浮かべ、諏訪ちゃんがどういうことかさくらにきいた。

「･･･昨日下から声がして、それがずっと気になってたから･･･。隙を見て美術室を見てきたの。ドアはバチバチして開けられなかったんだけど、中から中尾くんの声が聞こえて･･･、」

「それほんと･･･？蓮が生きてるの･･･ッ？」

「･･･うん、他の皆も無事だって」

先生は、表情を変えずに一点を見つめ続ける。

その傍に駆け寄って話しかけた。

『･･･騙すみたいなことしてごめん。
信じてたけど確証はなかったから･･･。
ありがと、誰も殺さないでくれて』

ゆっくり私の方を見た先生は不意を突かれたような表情。

「･･･中尾くんが言ってた。
先生は、私達のためにこんなことしてるんだって。だから先生を信じて欲しいって･･･ッ」

「･･･みんなが生きてる。
だからって、1人の教師がどうこうできる問題じゃねぇんだよ･･･ッ、相手は、」

「ベルムズなんだろう？」

優しい声で、甲斐にそう問いかけた。

「･･･なんでそれを、？」

“ベルムズ” 。

何度か耳にしたことのあるその名前は、この界隈を仕切っている半グレ集団。

つまり、チンピラ以上ヤクザ未満のいちばんタチの悪いタイプの集団。

「･･･ベルムズの “K” に、景山の弱みになるような動画を撮るように言われたんだろ？
･･･お前は、“K” の正体を知ってる。」

「･･･“K” って、」

「ベルムズのリーダーだ･･･。
でもその正体は一部の人間しか知らない」

まるで都市伝説みたいな話。

「甲斐。お前は、独りじゃない。
俺が･･･ッ、必ずなんとかする！！」

先生は必死に、甲斐の目を見つめて伝える。

『･･･甲斐、頼るのは今だよ。
大丈夫、先生は絶対に助けてくれる』

すると甲斐は、涙を零して振り絞るようにその名を挙げた。

「･･･ッ、喜志だ。
ベルムズのリーダーは･･･ッ、“喜志正臣” って男だ」

「奴の居場所はどこだ？」

「中央町の、“YURIBA” っていうガールズバーだ、事務所はその奥にある･･･」

「･･･ッ、よく話してくれた･･･！」

先生は深く頷き、甲斐の肩を叩いて立ち上がった。

「ここからは大人の仕事だ。
───聞こえましたか？」

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