人 質 【2】

Ep.６４ ページ17

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「───5人ってどういうことだよ！」




教室を出ていこうとした先生の背中に、甲斐が怒鳴った。




「なんだ5人じゃ不服か〜？
じゃ、10人にしようか」

「冗談はやめてください･･･！」

「俺は本気だよ。
･･･刑事さんを可哀想だと思うなら、動画を撮った者が、速やかに名乗り出ればいい」

「名乗り出るわけねぇだろ･･･」




偶然だとは思う。


だけど、やっぱり頭の中を占めるのは12年前のあのことで。




「だったら刑事さんを信じるしかないな」




────ピシャンッ




無情にも、先生は扉をしめて教室を出ていってしまった。



12年前のことに関しては、吹っ切れたというか今更なんとも思わないんだけど。

そんなことより澪奈の動画を撮った人のこと。


この際私のことなんてどうだっていいんだから。



皆の話題は、動画に映り込んでいたジャージのこと。

うちの水泳部特注の青いそれは、澪奈もよく着ていたもので。




「･･･ジャージが特注品なら、水泳部の仕業じゃねぇの」

「･･･しかも場所は女子更衣室」

「犯人確定じゃーん」




皆の視線は、花恋に集まった。




「ちょっと待ってよ･･･、私じゃない！」

「お前がやったって言えば誰も死なずに済むんだよ･･･！」

「ほんとに私じゃないんだって──」

「私知ってるよ！
･･･花恋が澪奈に、ライバル心メラメラだったってこと」

「部長なのに、話題はいつも澪奈だったもんね」

「･･･うん、そりゃあんな動画も撮りたくなるか」




私は、花恋じゃないと思う。



花恋は水泳が大好きで。


澪奈にライバル心メラメラだったなら、真っ向から水泳で勝負すると思う。

あんな卑怯なフェイク動画作ってまで澪奈を陥れるような真似はしないはず。




「･･･翔もなんか言ってよ」

「･･･、」

「なんで黙ってるの･･･？」

「お前が景山を嫌ってたのは、事実だろ･･･」




真壁は席を立ち、教卓に置いてあったおにぎりとお茶を取りに行った。




「なにそれ･･･、あんたも疑ってるんだ･･･！
マネージャーのあんただって更衣室に入れるでしょ！？」

「なになに、まさかの新たな容疑者？」




茶化す石倉くんを思いっきり睨んだ。




「･･･ってことは、2人のどっちかが犯人･･･ってこと、？」

「･･･ジャージだけで判断するのは危険だと思う」




香帆が、口を開いた。





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