気付かない男、今井です。【III】

Ep.１１９ ページ25

side 今井






────“好きです、今井さん”。





夢なんじゃねェかって思った。




こんなに可愛くて良い子で、皆からも可愛がられてるAちゃんが。


俺なんかのことを、好きでいてくれていたなんか。



正直、まだ実感もクソもねェがここで言わなきゃ俺はもう腹を切る覚悟でやってきたんだ。





「───お、おお俺と、付き合ってくれませんか･･･！！」




噛むし、声は震えるし、もう散々だ。


肝心なトコで決まらねェのには慣れてるが、せめてもう少し堂々と言いたかった。


遠くの方で、三橋があのビーバー顔でこっちを睨んでるのが見えた。
その横で伊藤が呆れていて、理子さんは優しく微笑んでいて。
佐川とかいう奴も、こっちに向かってグーサイン。




(───･･･ここ、軟高だったァァア！！！！！)




軟高の昇降口前で、盛大に土下座&告白。


俺が紅高の番だってことも、知ってる奴は知ってるだろう。


だが、たとえ他校の奴らにナメられようと。

たとえ三橋に馬鹿にされようと。


俺は、この子にどうしても伝えたかった。



ナメられているのならあとでシメればいい話だし、三橋には普段の恨みも込めていつか絶対仕返しするし。




腕の中のAちゃんは、クスリと笑った。







──── ちゅっ、






『･･･お願いします、今井さん』







今日から俺は、この子の彼氏。









fin.

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