気付かない男、今井です。【III】

Ep.９６ ページ2

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─── わっしょい わっしょい




どこからか、そんな声が聞こえてきた。


興味本位で中庭に出てみると。




『･･･お神輿？』




え、なんで？


よく見ると上にむっくん先生が乗ってる。
･･･ちょっと楽しそう、なんかかわいい。




「おぉAちゃん！」

『･･･三橋さん、！？伊藤さんも･･･』




そのお神輿の先頭を担いでたのは、三橋さんと伊藤さん。

アホみたいにぽかんとみあげる私を見つけて、三橋さんは楽しそうに声を上げた。

あ、後ろに佐川さんもいる。




『な、にしてるんですか･･･？』

「なんか楽しくなっちまったてよ。
逆に馬鹿にしてるみてェで楽しいんだコレが」

『･･･』




まぁそうですよね。
そんなことだろうと思ったけども。
･･･どこからお神輿引っ張り出してきたんだか。




「コラァァア！！！！」

『ひぎゃッ』




後ろから物凄い怒鳴り声が聞こえて、思わず飛び上がった。

怒鳴り声とともに走ってきたのは、物凄い厳つい見たことの無い先生。
･･･教育実習かな？




「･･･剛田先生、彼等は良かれと思って椋木先生を･･･」

「ありえん！！」




ちょうどお神輿の前にいた私は、剛田先生(？)とお神輿の板挟み状態。

どうしよう、とあっちこっち視線をやっていると。




「てめぇ何なんだよ。
こちとら椋木先生にやれって言われてやってんだよ」

「うんやれとは言ってないかな、」

「え、言ってたじゃん。
神輿に乗りたいって、もう顔が言ってた」

「どんな顔？神輿に乗りたいってどんな顔？」



“神輿に乗りたい顔” をつくる三橋さん。

･･･わからないでもない表情なのが、またなんとも言えないというか･･･。




「じゃかァしい！！」

『んわッ』




私を押しのけて、椋木先生に殴りかかった剛田先生。
幸い転びはしなかったけど、椋木先生を庇った三橋さんが殴られて。




「三ちゃんッ！･･･大丈夫？
先生、暴力反対です！」

『三橋さん大丈夫ですか！？』

「あんたは自分の心配をしなさい」




慌てて三橋さんに駆け寄ると、軽く流されてしまって。




「赤坂くん、ごめんね。
剛田先生は今日が初めてで、やり方を探ってる途中で･･･」

「俺に逆らう奴ァ容赦しねェし！！
坂本先生に逆らう奴ァ、殺ォす！！！」

「えぇ！？」

「分かったかァァア！！！！」



物凄い剣幕で捲し立ててくる剛田先生の迫力に、私達意外の生徒は皆、勢いよく返事をした。




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