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そこに立っていたのは、
いつの間に帰ってきたのか――
玄関先で靴も脱ぎかけのまま、
鬼のような形相を浮かべたジョンハンだった。
室内の空気が、一瞬で凍りつく。
彼の視線はまっすぐスングァンに突き刺さり、
低く、
静かな声が落ちる。
「……スングァン?」
その声に、
スングァンは背筋を凍らせたまま、
ゆっくりと私の方を見る。
私は何も言わず、
ただワインを一口飲んで、
肩をすくめた。
――ほらね。
言ったでしょ。
そう言外に告げると同時に、
長い夜の続きを予感しながら、
グラスの底に残った赤を見つめていた。
スングァンの悲痛な叫びがリビングに響き渡る。
「ヒョン!!ギブギブ!!」
それに応えるように、
ジョンハンの怒りは収まらず、
さらに力を込めて締め上げる。
「お前は余計なことを勝手にペラペラと…!!」
私は焦って声を張る。
「その辺にしときなよ」
その一言で、
ジョンハンの腕がふっと緩む隙に、
スングァンは逃げるように部屋を駆け出していった。
残されたのは、
リビングにぽつんと二人。
なんとなく気まずい空気が漂う。
どちらも言葉を探しているようで、しかし口を開けずに沈黙が続いた。
しばらくして、
互いに顔を伏せたまま、
同時に口を開く。
「…あのさ」
「…あの」
小さな沈黙の後、私が先に口を開いた。
「お先にどうぞ?」
ジョンハンは何か言いたげに唇を動かすが、
結局何も言わず、
口を閉じる。
「……俺は…別にお前のこと…嫌いになったりしてないから…」
消え入るようなその声に、
部屋の空気が一瞬凍る。
「…っ!おい!なんか言えよ!」
照れ隠しなのか、大きな声で叫ぶジョンハン。
「…うん。知ってるよ」
彼が振り向き、問いかける。
「あ?」
「ジョンハンが私のこと、大好きで仕方ないこと」
その言葉に、
ジョンハンは思わず顔をしかめ、
手で頭を抱えた。
「ーーーっ!!やっぱ!お前嫌い!!大っ嫌い!!」
叫ぶと同時に、
慌ただしく部屋を出て行く。
あぁ。やっぱり。
「私はあの頃からずっと最低のままだ。」
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作者名:チューペット | 作成日時:2025年12月8日 14時


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