ヒーロー科と結界師2 (ページ36)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:174,529 hit

15-7 ページ36

「良守、守香。烏森を狙う敵の利点わかるか？」

「利点？」

『強みだよ』

「烏森の力でパワーアップ？」

「それは奴らの目的とかぶるな」

かぶるのかよ、まぁ当たり前だな

「いいか？敵側の1番の強みは、結界師(こっち)側の正体がバレていないこと」

『……』

「姿形も能力もこっちには全く不明。
逆にこっちの情報は筒抜けと言っていいだろう」

『…なるほど』

「昨日の奴は、強い臭いで妖犬の鼻を潰し、さらにフェイクを仕掛けてきた
お前たちはそれでどれだけ時間を食った？もう少し考えろ」

(学校でも説教、家でも説教かよ)

コトンッ、と湯飲みを置く

「でも、理屈通りにゃいかねぇだろ！」

「判断材料にはなるさ。お前たちは甘すぎるよ
今までが幸運すぎたな
もし、俺が烏森を狙う敵なら…あんな城、一晩で落としてやるよ」

そう言う兄貴に、私たちはゴクリと唾を飲んだ

「お前たちまだ、結界術も上手く使いきれてないんだろ
これはかなり使える術なんだぜ。例えば」

ピンッと結界を張る

その手には湯呑みが持たれている

兄貴は湯飲みを落とすと、湯飲みだけが落ちてお茶だけが結界に残った

「ま、標的指定だけでも、色々できる筈だ」

結界の角からお茶を流して湯飲みに入れる

「お前たち、考え方や術の使い方じゃ時音ちゃんにも勝てないよ。おじいさんもご立腹だったぞ」

「俺も守香も別に…勝ち負けはいいよ
難しいこともわかんねーし…ただ、面倒なことにならなければ…誰かが傷ついたりしなければそれで…」

「………。お前たちは優しいね
だがぬるいな。俺が理屈で考えろと言っているのは、感情じゃ耐えきれない状況なんて世の中にはいくらでもあるからさ

お前たちはそこで思考を止めるのか？
お前たちはまだこの仕事の重みが分かってないのか？

あの学校の近辺だけじゃない。この町全体、それ以上の人間の命を、お前たちは背負ってる

いい加減自覚持てよ。お前たちは正統継承者なんだ
甘っちょろいこと言って、いつまでも逃げられると思うなよ」

くそっ、なんなんだあいつ！

お前は戦国時代かっつーの！

部屋に戻って椅子に座る

自分の掌に刻まれた方印

正統継承者、ねぇ…