雷門の女神2 (ページ33)

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海風は雷門の旧部室前に来ていた

立てかけられた、立て看板の「サッカー部」の文字に触れる

いろんな思い出のあるこの部室は、雷門の始まりとも言える

ここから始まったのだ、彼らの伝説は

海風は、ふと木に吊るされたタイヤに歩み寄る

久しぶり、という眼差しでタイヤを押した

思い切り飛んでくるタイヤに、回し蹴りで止めた

ドシィン、と大きな音が響くと木から数枚の葉が落ちてくる

『………………、やっぱりお前は止め甲斐があるよ』

止めた足を戻し、衝撃で落ちてしまった帽子を拾い上げる

パンパンと手で叩きまたかぶる

『お前がキャプテンの特訓に付き合ってくれたおかげで、雷門のゴールを彼に預けることができた…
彼女にも、そんな風になって欲しかったんだが…。言葉にして伝えなければいけなかったのだろうか…』

海風は不器用なのである

誰かに気づかせること、伝えたいことは言える

だが、相手にこうしてほしいというのは回りくどい言い方になってしまうのだ

「海風さん!!」

『！』

現れたのは、のりかだった

『海腹…』

「お願いします、もう一度やらせてください!!」

『！』

頭を下げるのりかに、目を見開く

「私、もう一度やりたいんです
何か、掴んだ気がするんです!!」

『…あぁ』

ユニフォームに着替えたのりかは、タイヤに手をかける

「深く潜るみたいに頑張れば…」

そこへ、「のりか！」と声をかけられる

明日人だ

奥入、日和、万作、ヨネさんもいる

「1人で行くなよな！
島からいつでも一緒だろ！」

「そうですよ、全く」

「持ってきたよ、ヨネさん特製サンド！」

「みんな…ありがとう」

のりかは照れたように笑う

万作がタイヤを引き上げ、手を離す

「ぐっ!!」

また地面に叩きつけられる

「一生懸命頑張れば…、引き寄せられる！
お宝だって、勝利だって！」

頑張るのりかの姿を、じっと見つめる海風に、ヨネさんが声をかけた