元殺し屋はヒーローになる20 (ページ32)

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「両手を上げて、その場に伏せろ！」

「お…俺…」

後ずさろうとした彼が尻餅をついてしまい、私が彼のそばに駆け寄り『大丈夫？』と覗き込めば、真っ青な顔して私の服を掴む

「お、俺！」

『大丈夫、落ち着いて。ね？』

ガクガクと震えている彼の手を掴み、安心させるように力強く握り込めば、「ちょっと待ってください、彼は…！」と緑谷が説明しようとした時、「俺はなんもとってねーから〜！」とパニックになって、私にケースを押し付けて逃げ出し始めた

「お、おい！」

「止まれ!!」

『！』

「許可は出ている。撃てっ！」

「っ!?」

「ヒィィ〜!!」

彼を狙った発砲にアッシュも驚き自分の腰にさしている銃を抜こうとしたのを見て、『ダメ、アッシュ！』と強く制すれば、体を固めた
緑谷が彼を、私がアッシュにケースを押しつけてそのまま抱え込んで飛び上がった

「ああああああああ」

「〜ッ!!」

「前見て！」

『歯を食いしばってて！』

パニックになっている彼と歯を食いしばり、目を硬く閉じているアッシュに声をかけながら、私は“個性”で地面や壁を滑るようにして動き、緑谷は黒鞭を使ってその場から遠ざかる

「青子、青子！パトカーが！」

『チッ！』

すぐにパトカーが追いかけてくるのに舌打ちをして、分解と修復のスピードをさらに上げ、滑るスピードもあげていく
狭い建物の間を緑谷とともに抜けて、走る電車の屋根になんとか着地する

「どうして…いきなり発砲を…」

『んなこと、わかるわけないでしょ…』

困惑しながらも思案する緑谷の横で、手をついてはぁーと息を吐いた
顔面蒼白になる彼と放心状態のアッシュが「死ぬかと…思った…」と小さく呟いた

『アッシュ、大丈夫？』

「どさくさに紛れて胸触ればよかった」

『元気そうで何よりだよ、えろガキ』

電車が大きな鉄橋に差し掛かった
なんとか休憩のために息を整えさせていると、ふと遠くの方から何かが光った
ガバッと体を持ち上げて、顔面蒼白の2人を抱え『緑谷、飛べ！』と叫ぶ

ドベシャッと2人を放り投げると、緑谷はエアフォースでとっさに矢を弾き飛ばした
だが、弾いたと思ったら自分の意思で軌道を変えてこちらに向かってくる

『チッ!!』

2人を抱き上げて飛び退いたその時、私の腰に緑谷の黒鞭が巻きついた