元殺し屋はヒーローになる20 (ページ18)

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オセオンの宿泊施設にスーツケースを預けるためにチェックインしている男のそばから離れた少年は、オセオンの街並みを広く見渡せる窓辺に立った

賑やかな街並みには、子どもやお年寄りが楽しそうに笑い合っている
そんな街並みは自分が住んでいるゴミ溜めのような街並みとは違い、ここは眩しいと思ってしまえるほどであった

「いいところだね…。人も自然も豊かだ」

「あぁ…」

「それにしても、なぜこんなにヒーローがいるんだろうか…」

あちこちにヒーローがいる。しかも、多い
見たことのないヒーローが多くいる中、日本で活躍しているヒーローもちらほらと見受けられた

少年はジッと見た後、どこかにいるのではないかと頭の中で思い浮かべ笑顔で見送り、意地悪をしたあの人を探した

「…荷物を部屋に置いたら、観光に行くかい？」

「いいのか？」

「ムッシュウには、他の国の文化を学ぶためと言ってあるからね。大丈夫さ」

少年はわかりやすく「楽しみだ」という表情になると、早速部屋に荷物を置いて必要なものだけをボディバッグに詰め込み、男と共にホテルを後にした

屋台や色とりどりの景色が楽しめる国、オセオンを楽しんでいると、呼び止められることが多々あった
美しい容姿を持つ少年はうんざりしていたものの、どこか心地よかった

呼び止められる内容が「これ食べるか？」「お花はどうですか？」などとひどく穏やかでオセオンに来た観光客に楽しい思い出を作って欲しいという現地の人間の温かみのある言葉だった

(ここは、居心地がいいな)

この国は自分の素性を誰も知らない
だからこそ、居心地が良く時間を忘れてしまいそうになるほどだった

「すごいなぁ…どれもこれも新鮮なものだよ！」

「にしても、買いすぎてないか？」

『いいんじゃない？これぐらいで』

賑わってきた人混みの中、確かに耳に入った声
ハッと顔を上げた少年は、あたりを見回すもその声の主を見つけることはなかった

少年は脱力すると、「こんなとこに、いるわけないもんな」と小さく呟くと青空を見上げる
テラテラと光を浴びる太陽と白い雲、そして青空、自分の住んでいる国…アメリカでは見れない広がった美しい空に、少年は目を閉じる

「会いたいよ…青子」

たった少しの時間だけ、会えなくなっただけで心が苦しい
少年は胸を掴み、息苦しい感覚に襲われた