もう1人の正統継承者【男主】 (ページ7)

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ズキズキと痛む背中を耐え、自分の仕事着の服の袖を破って、水で時音の腕を洗い流し服の袖でぐるぐる巻
きにした

「守真くん…」

『お前はこのまま帰れ…式神飛ばしてやるから…』

「でも…」

『………お前らはこの土地がわかってない』

2人「！」

『ここは奴らに無差別に力を与える土地だ
奴らが欲しがってるのは力と時間
ここでは時間が力になる。長くいればいるほど、力が強くなるからだ
時間を稼ぐためなら奴らはなんだってする
良守、情けをかけてる暇はない、絶対に油断をせずに滅しろ
時音、無理だと思えば俺を呼べばいい。何があってもお前たちを守ってやるから』

「兄ちゃん…」

「守真くん…」

『放っときゃ、奴らは…人だって殺す…よく、覚えと、け…よ』

グラッと視界が揺れた途端、俺はそのまま地面に倒れた
妖のせいで、背中が痛い…焼けるように痛い…ッ！

「兄ちゃん！」

『大丈夫だ…時音を送るぞ…ッ
良守、天穴持て』

「う、うん…」

足取りが重くなっている時音を抱っこして良守と共に雪村家へ向かった
歩くたびに背中が痛む…けど、時音を家に帰さないと大変なことになってからじゃ遅い

雪村家の門を開け、扉の前でドンドンと叩く良守に、昼間のばあさんが「なんです、夜中に騒々しい!!」と怒りながら出てきた

『ばあさん…悪い、俺のせいで時音が…』

「静江さん、すぐに治療の準備を!!」

意識がない時音に不安げな顔をして「大丈夫だよね」と何度も聞く良守に、俺はなんとも言えず玄関先まで時音を運び込み、『失礼します』と言って、案内されるがままに家に入った

案内された部屋には布団がひかれてあり、そのまま時音を寝かせ、『あとを頼みます』と深々と頭を下げた

外に行くと、良守がボロボロと泣いているのと、ばあさんが「ここまで運んでくれたことには礼を言います」と俺にはっきりとそう言った

「あとは私たちでなんとかします。あなたたちは帰りなさい」

『……………守れず、申し訳ありませんでした』

「…あなたは、自分がすべきことをしたのです。あなたのせいじゃありません」

深々と頭を下げた後、雪村家の敷居を跨いだ途端、力が抜けるように地面に倒れた