もう1人の正統継承者【男主】 (ページ30)

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『…じゃ、さっさと帰れよ〜』

「兄ちゃん、帰らないのか？」

『俺は職員室で仕事済ませてからだ。良守、寄り道してねェで帰れよ』

「わかってるよ！」

職員室に戻り、適当に業務を終えてタバコを咥えながら自分の家に向かう

『ただいまー』

「あ、お帰り。守真」

『ん、ただいま父さん』

洗濯物を抱えて出迎えてくれた父さんに挨拶をし、自分の部屋に入って服を脱いだ。
普段着に着替えて庭に出てタバコを吸う

『………なんか、嫌な空気だな』

口元に当てたタバコの煙がユラリと揺れた

時音side

お父さんの知り合いの人がうちを訪ねてきた
幼い頃に亡くなったお父さんのこと、あたし…あの時、怖かったんだ

まだ幼かったあたしが夜中、自分の部屋で寝てたらおばあちゃんとお母さんの声と足音が聞こえてきて、玄関に寝ぼけ目で出ていくと、お父さんが血まみれになって帰ってきてた

「あ…あなた！あなた!!」

「静江さん、早く!!」

「はいっ！」

バタバタと治療のために駆け出していくお母さんよりも、血まみれのお父さんに釘付けになった
お父さんを運んでくれた人たちを見ておばあちゃんが外に出ると、紫色の仕事着を着た良守と守真くんのお母さん、そして守真くんが立っていた

「すみません…。時雄さん、駆けつけた時にはもう…でも当の妖は守真が退治しておきましたから…」

『…………』

「本当になんで時雄さん…1人で無理をしたのか…」

その時見えた、守真くんの血まみれの姿
無表情で顔にはお父さんの血がついていて…すごく、すごく怖かった

「時音…」

「！」

血まみれの手でお父さんがあたしの肩を掴み、「奴らに、隙を見せるな」と途切れ途切れにそう言った

(あの時の守真くん、すごく怖かった…)

いつもあたしたちの手を引いてくれる優しい守真くんじゃなかった
まるで、別人みたいな…

守真side

『ふぁっ…』

でかいあくびをしながら夜の烏森の見回りに出る俺と良守、そして時音
正統継承者というめんどくさいものを背負わされてしまったおかげで、こうして睡眠時間を削っての仕事が与えられている

迷惑である

「兄ちゃん、寝不足か？」

『お前みたいに授業中寝れないからな』