もう1人の正統継承者【男主】 (ページ19)

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「しかもフツーの人に姿見えんやろ
これはもうねーのぞき放題!! なわけよ！」

こいつはどうやら、現世でもこんな感じで生きていたんだろう
俺はよくわかった。ロクな奴がいない

「まあね。見るだけで触れんっちゅうのが、残念なとこやけどね
このもどかしさがまたええんちゃうかと…」

「あんたって人は…あんたって人は…」

『良守、これが現実だ』

腐っても男、女の裸には興味があるのだろう
俺はどちらかと言うと別にそう言うのに興味はない

「あーーーっ！」

「よう、ねーちゃん！」

「…………何やってんのよ
まさかさっきの異変、こいつが犯人？」

「犯人て…ボクまだのぞきしかしてへんがな」

良守は未だに四つん這いになり、突っ込む元気すらなくずっと地に伏している
わかるよ、俺もそんな気持ちだ

「ほっとけよ、ハニー。こいつ、ただのザコ霊だぜ」

「わかってるよ」

「あらー。こらまた失礼な口きくワンちゃん連れてはりますねー」

「もっと別の邪悪な感じだったからね
こんな能天気なのなら楽なんだけど…」

「時音…もういい、こいつ退治してくれ」

「いやよ、面倒臭い。そいつの始末は任す
あたし、本命の方探すから」

「あっ！待てよコラ！」

走っていく時音を放り出し、俺はそのまま校舎の中に足を踏み入れた
俺の単独行動に気づいた良守は、「兄ちゃんもかよ！」と叫んでくるのに俺は振り向き『良守が適任だろ』とだけ言ってそのまま中に入る

変な妖でも入ってきたら、あの人間霊は真っ先に喰われちまうだろうからな

(今回のは、妖でもなんでもないな…)

もともと邪気のあるものが入ってきたんじゃなく、この敷地内で魔性に変化したって感じだった

これは十中八九霊だろうな
たまに念のこもった品が妖に化けることもあるけど、そういう品がここに持ち込まれること自体が少ない

例えるなら、唐傘が、唐傘おばけになったって感じだな
そう言うのは本当に少ないけど

でも、霊の場合は変化したっていうより…“病んだ”って感じが正しいな

感じるのも少ない…

つまり、まだ変化しきってないってことだな…
感じ取ることも難しいしな…くそ、やっぱり妖犬は1人一匹いるだろ…なんで俺にはついてないんだよ