元殺し屋はヒーローになる19 (ページ27)

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「お嬢のこと、お願いね。あぁ、それと…」

「？」

「今のお嬢、襲いやすいと思うよ。俺の“個性”にかかった人間は、ベッドの上に簡単に組み敷けるぐらい弱っちゃうから」

「…えっ」

「お嬢と寝るなら今すぐだね」

それだけ言い残した男は、「お嬢」と青子を見る
青子は顔を赤らめて荒く息をして『？』とこちらを見ていた

「治崎破無に」

『！』

「栄光あれ」

『昴!!!』

パンッと乾いた銃声が響いたのと同時に、下の方からも銃声が聞こえた
男がこめかみに銃口を当てて引き金を引いたらしく、頭部から血が流れていた

『…………』

安らかに眠っているように死んでいる2人に俺は何も言えなかった
見慣れた死体と人の死に、俺は何も感じなかった

『…行こう、アッシュ』

立ち上がった青子の瞳からは、何も宿していなかった

青子side

2人の死は日本警察にも知れ渡り、死体は日本に引き取られることになった
立会人になったのは兄さんで、事情を説明してくれていた

私は自分のセーフティで仮眠をとっていた
昴の“個性”のおかげで本調子でないので、しばらくはここで休むことになるだろう

その間、アッシュは看病すると言って聞かなかった
その時の目が「ワンチャン、襲える」という素直すぎる欲望を孕んだ目だったので、丁重にお断りしておいた

「お、回復したな」

『おかげで3日間無駄にしたよ』

事務所に顔を出すと、天城兄さんは「いいことじゃねぇか」と笑い飛ばしてくる
私はそろそろ日本に帰らないといけない

ビザの関係もあるし、何よりも向こうのインターンに呼び戻されそうだからだ

「荷物は準備したのか？」

『まあ、ちまちまと…』

アッシュになんて伝えるか…日本に帰ることになった
まあ、それとないことは今まで何度か話してたし、理解してくれるだろう

懐かれた分、離れるのは少し嫌だ
なによりも、あのディノ・ゴルツィネに愛玩物として手元に置かれている山猫を助けるには、もっと準備が必要になる

どれぐらいかかるのかわからないけど、慎重に進めてかつ効率的に迅速に動かないとアッシュのこれからが危ないだろう

まだ14だし、これからたくさんのことを考えて感じてもらわないとこちらとしても困るもんだ