元殺し屋はヒーローになる19 (ページ26)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:19,431 hit

134-3 ページ26

ただ、自由にしてほしかった

私を縛るしがらみ全てを壊して欲しかった

助けて欲しかった

『……………自由に、なりたいの』

誰にも縛られることのない自由なこの世界に、飛び立つことができればどれだけ私は幸せかみんなは知らない

5歳から闇に放り出されて、私は生きた心地がしなかった
どれだけ助けを求めたとしても、誰も助けてなんかくれなかった

見ていたようで見ていない、見なかったようにされてどれだけ屈辱と絶望を与えられたのだろう

『お願いだからもう…放っておいて…関わらないで…みんなのこと、これ以上…嫌いになりたくない』

苦しめてきた人たちの中には、少なからず私の身を案じてくれる人もいた
全ての人間が悪い人間ではないのを知っているから、だからこそ厚意を無碍にできなかった

オヤジ様は私を拾ってくれた
オヤジ様についていく人たちは私を気にかけてくれた

毎年の誕生日にと中学からずっと贈ってくれたものも今は家のクローゼットの中にしまわれてるけど、捨てたことなんて一度もなかった

「………………………それでも、若はお嬢を愛してたよ」

『知ってる…どれだけあの人が私を大切にしてたのかぐらい見てればわかる…
でも私は…ただ、見守ってて欲しかった』

私がどんな人間になるのかを、どんなヒーローになるのかを

どこで履き違えたその思考を、私に向けないで欲しかった
私に笑っていてほしいのなら、幸せになってほしいのなら、私の方を見守って応援してくれればそれでよかった

無駄な犠牲も出さずに済んだ
ただ妹がそこそこ強くなってヒーローを目指しているということを理解してくれれば、全てが丸く収まっていた

「……………ねえ、そこのキミ」

「！」

「少しだけ、話がしたいんだ」

『昴…！』

「危害は加えないよ…」

吸血のおかげで目の前がグラグラする
媚薬ではないだろうけど、身体がほたってうまく動けない

アッシュside

「お嬢のこと、好き？」

「え…」

青子からゆっくりと離れて昴という男の前に立つと、男はゆっくりと微笑みながら聞いてきた

「好き」と言う言葉に俺は少し頬を染めて、小さく頷くと男は「そっか」と呟く