元殺し屋はヒーローになる14 (ページ23)

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太い髪の針が芦戸の太ももに突き刺さる

「ああ!!」

激痛に芦戸が足を滑らせ、落ちる

「芦戸」と駆け寄った常闇の瞳に映ったのは、「あはっ」と白い歯を見せて笑う長身の男

「だいじょぶー？」

「!?」

「誰!?」

びりっと破かれた布は太ももの出血点を丁寧に押さえつけ縛られている

「あ…なたは…？」

「…大丈夫。オレは味方だよ」

男は芦戸の手当てを済ませると、ビキッと手に力を込め鋭い爪を伸ばした

「オレぇ、可愛いロゼリアちゃんの友達傷つけるやつ…死ねばって思ってんだよね
だから…死ねよ」

瞳孔が開き、男は鋭く伸びた爪をスライスに向ける
ビキビキと皮膚が浮き上がり、肌色から薄い青緑に変わっていく

耳が、口が、変わっていく

「鋭き刃(シャープ・ザ・ナイフ)」

「ぎゃっ」

斜めに大きく切り付けられたスライスは、血を流し後ろにフラフラと倒れていく

男の顔を見て驚愕する

「お、お前は………!!! ヴィランズランド！」

「ヴィランズランド!?」

「オレの名前はリア・ファム…ヴィランズランドの寮生だよ」

ペロリと長い舌で爪についた赤い血を舐めとる男…リアは、オッドアイの瞳を光らせた

「さぁ、最後の仕上げだ」

身構えたスライスだが、見えない速さのリアに圧倒され、背中に蹴りを入れられ壁にめり込まされた
すぐに立ち上がろうとした途端、目の前にはオッドアイを光らせ「あはははははっ！」と狂気のように笑うリアが爪を立てていた

バシュッとという音と共に、どしゃっと倒れるスライス
死なない程度に手加減したであろうリアは、「つまんねーの」と倒れたスライスを足蹴にした

「ねぇ」

「！」

「そこの女の子、止血はしたけど消毒してねーの」

リアは芦戸を指さし、常闇に処置を促すように向かわせる
そしてリアは、心配して駆け寄る常闇が芦戸の前で止まったのを確認し、常闇の首に手刀を入れた

「な…に、!?」

「ごめんねぇ？オレぇ、あの女倒すために来たんだ～」

まるで今までの出来事を忘れさせるように、常闇の意識を刈り取った