二十話 ページ21
私を救ってくれた彼、及川徹との出会いはいつだっただろうか。
確か、中学三年生のとき。
宮城で開催された試合に来て、私が暴走した日。
『ねぇ、なんでそんなのもとれないの?正面だったじゃん。そんなプレーしてんならコート出ろよ。』
『なんも出来ないならサーブくらい入れてよ。』
『邪魔だって!!』
『アンタたちは私にトスをあげるだけでいい、勝ちたいなら。』
『なんでわかんないかなぁ?』
___私の言うこと聞けっつってんの。
結果、その試合には負けた。
彼女たちが試合を放棄したから。
一本目を綺麗にあげたって、ボールはコートに落ちた
『もう…どうすればいいの…?』
結果にも、仲間にも、自分にも納得がいかなかった。
そして、その原因が自分だということにも、気づかなかった。いや、認めたくなかったのかもしれない。
バレーにワンマンチームなんてないって分かってる。
もしそれがあったとしても、それはきっと弱く脆いチームだろう。
一見1人だけ上手いように見えるチームは、他の5人が自分の仕事をこなしてこそ輝いて見えるのだ。
それをワンマンチームとは言わない。
一筋の涙が頬を伝う。
辛くて、しんどい。誰か助けてくれ。
もう嫌なんだ。バレーなんて。
好きだった、はずなのに。
「やっと見つけた。探したよ。」
俯く自分に影が差す。
声からして相手は男の人で、落ち着いた雰囲気から自分よりも年上だと言うことが分かった。
実際顔をあげて彼のジャージを見たら、[青葉城西高校]と胸元にあった。
端正な顔立ち、私よりも頭一つ分くらい大きな身長。
華やかな容姿が素敵だが、一体彼は誰だろうか。
初めて見た。地元の人だろうか。きっと今回の大会のラインズマンに来てたのかな。地元の高校がこうやって補助役員として入ることは少なくない。
「西表中学の子だよね。試合見てたよ。」
『…ありがとう、ございます。』
「辛そうだね。まるで昔の俺だよ。見てらんない。」
少しウザったく思えた。
彼がなにを言いたいのか、分からなかった。
私のプレーが嫌すぎて、直接言いに来たのか。
「俺が俺がってなっちゃうんだよね。わかるよ。」
そして彼は言葉を続ける。
「でもね、俺の相棒が言うにはね、”バレーは6人で強い方が強い”んだって。
君も、チームメイトは大切にした方が良いよ。」
なんて、俺が言えたことじゃないけど、と彼はヘラりと笑ったのだ。
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nonn - オチは、木兎さんだと思っていたので以外でした。木兎さんバージョンのオチも見たいと思いました。とても面白かったです。 (2022年2月9日 12時) (レス) @page33 id: cfc7f8846a (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 奏音さん» 夜久さんのメイド服は世界を救います(真顔)面白いと言って貰えて嬉しいです!これからも恐らくダラダラと長く続く予定なので、付き合っていただけたらと思います! (2020年5月15日 9時) (レス) id: 0de810db1e (このIDを非表示/違反報告)
奏音 - 私まだ1しか読んでないのですが、もう、面白い以外の言葉が見つかりません!wなんか堤ちゃんの性格が面白くて好きですwwwあと、流石にやっくんのメイド服はヤバいです…!グヘヘヘ←(((キモ これからも頑張ってください!応援してまーす!! (2020年5月8日 23時) (レス) id: ea3d173ac1 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 土の影さん» 土の影様が読んでくださっていたことに感激です!これからも面白いと思ってもらえる作品目指して頑張ります。コメントありがとうございます!! (2020年4月9日 11時) (レス) id: 0de810db1e (このIDを非表示/違反報告)
土の影(プロフ) - 続編出てる中こちらへのコメント失礼します!読んでいて楽しすぎて、すぐコメントしなくては…!と思いまして。本当に面白いです、これからも応援してます!更新頑張ってください!(^^) (2020年4月9日 10時) (レス) id: 71404c1896 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2020年3月21日 23時