誰も知らない僕らの居場所。

第1章_1 ページ2

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「転校生の今市くんだ」
「今市隆二です。宜しくお願いします」
季節外れ、6月の転校生。
クラスメイトの視線が酷く痛い。

ー言っとくけどいじめとかじゃないからな…家の事情って誰にでもあるだろ？！勝手に哀れむんじゃない！

という声は心に留めて名前もうろ覚えの男の担任に指定された席に座る。
窓側の1番後ろ、ひとつだけ追加された席が自由と言いようのない孤独を感じさせた。

俺の紹介はそこでおしまい。もっと好きな食べ物とか言っておくべきだったと後悔しても時すでに遅しで、加えて誰も俺に質問はない。それはそれでまた切なかったりする。

ーまあ、誰も俺の事なんて興味ないよなぁ…。

俺がこう思うのも無理はないと思う。なんせこの学校は有名な進学校、偏差値はそこらの学校と比べ物にならない。
結局皆、自分の成績とか志望校の事で頭がいっぱいなんだろう。

今だってまだ2年生だというのに皆が開く参考書は受験用。しかもT大とかK大とか誰でも知ってるような頭の良い大学のもの。
休み時間になってもクラスに雑談のざわめきは無く、シャーペンと消しゴムの音、たまに質問する声が聞こえるくらい。

それに、転校生に対する目線が明らかな敵対を示している。
ーお前もライバルか。
ー邪魔したら殺すからな。
誇張しているわけではなく、本当にそんな目でチラリと俺を見るクラスメイトが何人もいる。

きっとそれは、俺が来たからじゃなくて、このクラスが”B組”だから。

ー”万年次席のB組”。
そう呼ばれているから。

…だと、信じたい。

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