【w.r.w.r.d!】梔子と同居人 【kn】

長袖 ページ16

『あ…』

お風呂に入るために服を脱いでみて分かった。手や指先は透けてないのに、二の腕の辺りが透けてきている事に。
そこそこ長い期間変動が無かったから油断してた。そういえばこの身体って不安定なんだったよね。

消えない条件はまだ見つかってない。勿論透けた部分を戻す事も出来ない。
でもこれじゃ、半袖着れないなぁ。そう思いながらささっとお風呂に入って、長袖を着てリビングに戻った。

『ふい〜、お風呂上がりましたぁ』
｢んー。あれ、A暑くないん？それ｣
『乙女は冷え性なもんなの！』
｢ふーん。｣

もう少し興味持ってくれてもいいんじゃないかな！？
まぁ追求されたらそれはそれで困るから良いんだけどさ…ちょっと、ね？

風呂入ってくると言い残してソファから立ち上がったシッマを見送って寝転がった。
袖の余ったゆるゆるの長袖を捲るとそこには先程と変わらず向こう側が見える腕。こういうのって普通指先から消えていくもんじゃ無いのかね？

『いつ、全部無くなっちゃうんだろ。』

諦めた訳では無い。いや、諦めたくないって言った方がいいかな。だけど、消えていく身体を見ちゃうとね。嫌でも現実が目に入るというか。

『怖いなぁ…』

本音を言えば、やっぱり怖い。だけどシッマは私を消さないよう頑張ってくれてるんだもん、私が弱気になってちゃいけないよ。

元気で、馬鹿やって笑わせて、弱音なんて吐かないが私の取り柄じゃん？いつ消えてしまうかわからない状況で、最後の姿がいつもの私じゃないなんて、嫌だから。
だから私は笑顔でいよう。最後までシッマの中では元気なAでいられるように。

｢あがったで〜｣
『はやっ！まぁいいや！おかえりー！！』

そして私は笑顔を作る。いつか来る最後の日まで。

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