隠さぬ水窓 ページ16
−−−−
−−
まだこの場に慣れていない新入生たちは、突然の出来事にあちこちに散らばってしまった。
「このままでは学園が火の海です。誰かあの狸を捕まえてください!」
クロウリーが頭を抱えてメソメソといかにもな嘘泣きをしてみせると、アズールが「その役目、僕が請け負いましょう」と一歩前に出た。
あからさまな内申点稼ぎ−−−彼らしい。
「フロイド、少し離れよう。熱い」
「そうだね。火はあんま好きじゃねえし」
円を描くように広がる青い炎は、少し離れていてもチリチリと頬を焼かれるような痛みが広がる。
人魚は暑さにめっぽう弱いということもあってか、二人は関わりたくないと言わんばかりにそそくさとその場から離れた。
「熱い」と小さな声で呟くAを、フロイドは何も言わずに包み込む。
「アチチチチ! 誰か! ケツの火 消してくれ〜!!」
その時、二人の前を何かが通り過ぎていった。
スカラビア寮 寮長のカリム・アルアジームは、先程の狸の火の魔法を尻に受けてしまい、助けを求めて走り回る。
普段ならば彼の付き人であり、副寮長でもあるジャミル・バイパーが傍にいるのだが、この騒ぎの中ではぐれてしまったようだ。
「カリム、大丈夫?」
「あ、A! 大丈夫に見えるか!? 早く得意の水魔法! 早く!!」
「ラッコちゃんさぁ、自分のユニーク魔法 覚えてる?」
燃え盛るカリムの尻。
燃え盛っているカリムの尻。
・・・失礼。
フロイドは式典服の袖をバサりと広げて包み込むようにAを熱さから守り、自分は溶けそうな思いをしながらもいつものように笑う。
「あ、そうか。オレのユニーク魔法は水を出せるんだった! 忘れてた!」
「早くしてくんない? あんま近寄られると熱いんだけど」
カリムは自らのユニーク魔法、
「いやあ、助かったフロイド! ありがとな!」
「オレなんもしてないし」
彼らの後ろでは、恐らく内申点目当てであろうアズールと、ルール違反を許せないリドルが先程の狸を追いかけ回している。
Aはアズールを見て苦笑いを浮かべる。
「それよりフロイド! ちょっとAにくっつきすぎじゃないか? 離れろ!」
「え〜? ラッコちゃんに関係ないじゃん」
「なんか嫌だから離れろ!」
「うっざ」
.
683人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼空(プロフ) - あ、バレました??ww (2020年10月5日 0時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 蒼空さん» ありがとうござ・・・ん? あなた、もしやここに来るのは二度目ですな・・・! (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - うるさん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます。最近ちょっと更新停滞気味だったのですが、お陰様で頑張れそうです。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
蒼空(プロフ) - あ…しゅきぃ…(語彙力皆無) (2020年10月2日 20時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
うる - この作品がすごく好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 73336d6f0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユナ | 作成日時:2020年9月15日 18時