CHAPTER1 孤高のマーメイド ページ2
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「おい、見ろよ。“孤高のマーメイド”だ」
「おお。相変わらずクールビューティだな」
生徒たちがひそひそと話す中を、堂々と背筋を伸ばして歩いていくのは、ナイトレイヴンカレッジの二年生、A・セイレーンだ。
彼女は学園内ではとびきり美人で有名だが、そのクールで近寄り難い雰囲気から周りの生徒は視線を送るだけに終わっている。
が、実は近寄り難い理由はもう一つあるのだ。
「A〜? 次 飛行術だから早く行かないと」
「フロイド。でも、私 やっぱり飛行術はいやだよ」
「オレもやだけどさぁ。授業は受けないとじゃん? ほら、行こ?」
彼女には必ずオクタヴィネル寮の三人のうちの誰かがボディガードとしてついている。
学園内では同じクラスのフロイドが、放課後は同じ部活のアズールが、寮内では世話係のジェイドがついている。
少しでもマーメイドにお近づきになろうとするものがいれば、三人に海の藻屑にされてしまうらしい。
「・・・分かったよ。外、やだな」
「授業ちゃぁんと出たら、ギューってしてあげるから」
「え、いらないよ?」
「うわ、ひでぇー。本気なのに」
話しながら去っていく二人の背中を、学生たちは立ち止まってまで「あれがマーメイドか」と恍惚な表情で見つめている。
生徒たちは謎の多いマーメイドに各々 好きなように想像を膨らませるが、実は本人は至って普通の女の子だ。
悪い虫を寄せ付けないためのボディガードである三人のおかげで、見事に無口でクールだという印象が周りに根付いてしまったが、普通の女性と何ら変わりない。
「なんだろ。あの人たちこっち見てる」
「いーよ気にしなくて。ほら行くよ」
「私に何か用があるのかな。ちょっと行ってくる」
駆け出そうとするAの細い腕を、フロイドが優しく掴み、「授業、遅れるよ?」と笑う。
「でも、まだ見てる」
「いいから」
掴んだ腕を強く引き寄せられ、Aの背中がぺたりとフロイドに密着する。
「フロイド?」
何も話さないフロイドを不思議に思ってAが上を見上げると、彼は鬼の形相をして生徒を睨みつけていた。
Aは首を傾げ、「どうしてそんな怖い顔してるの?」と問いかけた。
「んーん。ちょっと腹痛かっただけ」
「そう? ならいいんだけど。授業 行こっか」
今日もまた、Aに近づけない生徒が増えた。
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蒼空(プロフ) - あ、バレました??ww (2020年10月5日 0時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 蒼空さん» ありがとうござ・・・ん? あなた、もしやここに来るのは二度目ですな・・・! (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - うるさん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます。最近ちょっと更新停滞気味だったのですが、お陰様で頑張れそうです。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
蒼空(プロフ) - あ…しゅきぃ…(語彙力皆無) (2020年10月2日 20時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
うる - この作品がすごく好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 73336d6f0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユナ | 作成日時:2020年9月15日 18時