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昔々、ある所に月がよく見える海に面した孤城に住む1人のお姫様がいましタ。
彼女は孤城で彼女を愛する多くの者に出会いましス。
夜を統べる魔王、海を守る神様
芸術を与える帝王、人を驚かせる道化師
幸せを紡ぐ魔法使い
そして、忠誠を誓う騎士
静かな城でゆっくりと時を刻む彼女と仲間の間には確かな絆と愛がありましタ。
しかしその幸せの終わりは突然訪れまス。
皇帝が国を支配し、城を取り壊そうとしたのでス。
帝王の芸術作品は強奪され、海は荒らされ、道化師は栄光の見せしめとして連れ出されましタ。
城が混沌で荒れる中、ただ1つの優しい希望はお姫様でしタ
彼女は壊れていく仲間に寄り添い、支え、光の射す方へ誘おうとしていたのでス。
……けれどそれも長くは続きませんでしタ。
彼女はある日突然城から姿を消したのでス。
魔王も、神様も、道化師も、帝王も、魔法使いも何一つ分からないまま姿を消し、その後城へ戻る事はありませんでしタ
手がかりは彼女が騎士に残した一言のメッセージだケ。
｢……仲間たちは今でも愛する彼女の事を探していル。とカ。｣
｢……はぁ(？)｣
何だこの話。
登場人物といい、結末といい中々に癖が強い
お姫様いる割に王子いないし、挙句には魔王と仲良してるし。根本的に大丈夫かのかこの御伽話
｢そこでキミに質問ダ。｣
｢ここで！？｣
｢キミが物語の作者だとしたら、この後どんな結末を描くかナ？｣
エ？
そんな質問が難しい事ある？？
｢答えてくれないと教室に戻れないヨ？｣
｢ｳｯ｣
挙句には脅される始末。
“あ゛ぁ”と唸っても彼はニコニコとこちらを見るだけで手助けはしてくれない。
出来るだけ彼が求める結末の答えに辿り着きたいが、そこに行き着くまでのヒントが皆無
……ならばもう仕方ない
｢……光を灯すかな｣
自分が思いつく最も幸せな物語を紡いでしまおう
｢お姫様がもう一度戻りたいって思える希望の光を灯して皆が待ってるお城に誘う。で、また皆で幸せな生活を送って欲しい…な｣
・
“そウ……”
｢…ありがとウ。
…そこの角を右に曲がって真っ直ぐ行くと目的地ダ｣
数秒の沈黙の末、彼は微笑んで私の背中を押す
｢ありがとう！！｣
｢……また明日｣
彼の返答を聞いて先程より軽い足取りで無事に教室へ戻る
そして。
私＿＿あんずは波乱の転校初日を終えた。
｢＿＿キミが希望の光ダ。期待しているヨ｣
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作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月3日 23時
