女王の朔望月 (ページ39)

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私の返答を聞いた後、零は“準備がある”と部屋を後にした

＿＿＿＿＿自分の未来。

愛情の欠片もない孤独な城でずっと考えた。

ファンに愛される資格もかつての仲間と時間を共にする資格も失った私はこれからどうするべきか

いつも思い浮かび上がるのは皆の姿。
大きな挫折を乗り越え、ゆっくり1歩ずつ。それでも確実に進んでいく彼ら

……なら私は？

皆を傷つけないためと唱って自分が傷つかない様に不登校になり、そのまま停滞し続けた。

分かってる。
この学園にもう私は必要ない

でも心の奥底で“皆と一緒に居たい”と思う自分がいて

それがどうしようもなく惨めで情けなくて。

それならいっそ感情なんて捨ててもう一度柊の家で人形のように下僕として生きていく方がよっぽど私に合っている

それに、自分勝手な願望で天才たちを傷つけた罰を償うにはこれくらいがちょうどいい。

幸いにも実家のある英国は9月から新学期が始まるため今から準備を始めれば十分間に合う

＿＿＿＿＿そう思っていたのに

『(……どうして引き受けちゃったのかしら)』

零が見つけた一等星達を導くなんて

私が革命に関わることでまた誰かを不幸にする可能性だってあるのに

……あぁでも。
万が一の時は身の破滅を持って守ればいいのか。
こんな私でも培ったものは少しばかり残っているはず

『(……結局、まだここに残る理由を探しているのね)』

経験とは酷なものだ。

今まで無いのが当然だった物は1度与えられてしまうと失う事に躊躇を覚えてしまうらしい

居場所も。幸せも。愛も。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

｢なんでよ、ねぇなんで。どうして俺から離れるの｣

｢俺は…！Aと、…いた、い……だ、け……｣

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『……凛月、私も貴方と一緒に居たい』

貴方の声を、ピアノの音色を、優しい笑顔をずっと隣で感じていたい。

貴方の腕の中で眠りに落ちてしまいたい。

けど、その願いは叶えられない。

……いや
叶えてはいけない。

凛月の願いは私のエゴの一直線上にある。
つまり凛月の願いを叶えると言う事は私のエゴを実現すると言う事。

＿＿＿かつて皇帝に“傲慢だ”と言われた理想郷の現実化

『(……そんなの、できない)』

凛月。
ごめんなさい。好きなだけ恨んで。

だからお願い。

＿＿＿＿＿私のエゴには気づかないでいて