女王の朔望月 (ページ35)

今日:58 hit、昨日:65 hit、合計:107,940 hit

33 ページ35

・

チェックメイト

渉から発せられた単語は一瞬にして頭を真っ白に塗り替えた

彼は愕然とする私を見て神妙な面持ちで言葉を続ける

｢……貴女の敗因はただ1つ。この学院を盤にした事。貴女も我々と同じ様に学院の掌握に長けていますが、愛し子達が加わった現状をより上手く動かせるのは我々です｣

愛し子。
さっきの双子たちが正にそれに該当するのだろう

｢たった5分、10分の行動の差が戦況を動かす鍵となります。貴女はそれを見誤りました｣

淡々と事実を述べていく彼は何処か辛そうで何かに耐える様な表情をしている

｢……そろそろお時間です。残念ながら現状では私は堂々と貴女の隣に立つことが出来ません｣

『っ、』

｢けれど必ずお迎えに上がります。
A。貴女に永遠の契りを｣

その言葉を残した瞬間に彼の周りを鳩が飛び囲む。

勢いに呑まれない用に片手で顔を覆いながら渉の居た方へ手を伸ばすと一羽だけ私の手の上に鎮座した

『……あなたはジャンヌ、？』

小さくそう呟いた瞬間に手元の鳩は飛び立つ
そして前を向いた時には渉は消えていた

ほんの一瞬の出来事に唖然とした時、その無の空間から引っ張り出すように左側から大きな声が発せられる

｢A！！！！｣

『…り、つ』

自分を呼ぶ声にはっとし、門まで急ごうとしたものの、それは彼によって遮られ気づいた時には凛月の腕の中

｢なんでよ、ねぇなんで。どうして俺から離れるの｣

『ごめ、』

｢俺は…！Aと、…いた、い……だ、け……｣

『……凛月？凛月！？』

言葉が途切れ途切れになった彼に呼びかけるものの返答は無く、ただ辛そうな呼吸音が聞こえるだけ

少し汗ばんだ額を見るにここまで走ってきたと考えるのが妥当

上を見ると太陽がかなり出ている

朔間の体質でこの時間帯に走り回るなんて無謀に近い
そんな無茶な行為を私は彼に強いてしまったんだ

徐々に身体から力が抜けていく凛月を必死に支え、近くに座らせようとした刹那

＿＿背後からドカン！！と言う破壊音が鼓膜を揺らした

『れ、れい…』

｢話は後だ。とにかく凛月を休ませる｣

『……音楽室。そこに連れて行って。後から行くわ』

｢お前っ｣

『もう逃げない。……柊(うち)の過保護に連絡しなきゃいけないの』

＿＿＿＿＿負けた私に逃げる資格はない

そう思いながら70件を超えた執事の電話の応答ボタンを押した