24 ページ26
・
｢……ってことがあって〜｣
｢なぁにそれ、｣
暖かな昼下がり
眠い身体に従って机に突っ伏しながらナッちゃんと向き合う
話を聞いてもらいたくて“恋バナしたい”と言ったら“きゃあああん♡”なんて語尾と目をハートにしたが
いざ事情を話せば顔から表情が抜け落ち、何も言わずとも怒ってるのが分かる
｢……つまり凛月ちゃんの気持ちを知っててAちゃんの事を隠してたってこと？｣
｢……多分｣
｢最悪ね｣
はぁと大きな溜息と共に頬杖をついている姿は美の擬人化そのものだが、目が完全に獣と化してる
昔の血が騒いでるって
｢…って何でナッちゃんがそんな怒ってるの？｣
｢あぁらヤダ失礼しちゃう！凛月ちゃんのせいで霞んでるけどアタシだってあの子が大好きなのよ？それを勝手に横から手を出しちゃって｣
もう！
とぷく〜と頬を膨らませて可愛く怒る
……ように見せているだけで全然可愛くない。目が完全に殺人鬼。ナッちゃんじゃない。鳴上嵐だ。
｢……にしても。どうして急にお兄さんと繋がってるって分かったのよ？｣
どうして。
その答えは至極簡単
｢昨日電話してた｣
聞こえたのは切る直前の短いやり取りだけだが、
Aの名前を呼んだ事、それと＿＿＿＿＿
｢…ナッちゃんはさ〜“またね”ってどんな相手に言う？｣
気になるその一言が繋がってた事を助長させる
｢そうねぇ。毎日帰り際に言ってるからあまり深く考えてないけど、アタシなら＿＿＿＿｣
｢……ごめん、なに？｣
大事な所で声が廊下の音に掻き消される
口が動いているのは分かったが、何て言ったのか聞き取ることが出来なかった
｢だ〜か〜ら＿＿＿｣
｢ゆーーーーーくぅぅうん！！｣
ナッちゃんがもう一度言い直そうとした時だった
歌で培われたビブラートの無駄遣いが聞こえたのは
｢どうしたのゆぅくん！！聞きたいことがあるんでしょ！｣
｢気持ち悪い！！半径10m以内に近寄らないで！！騎士って絶対この人じゃない！！｣
｢何言ってるのぉ！俺はゆうくん専属の騎士だよぉお！｣
｢ひぃぃい！！｣
ドタドタと品の欠片も無い足音に悲鳴が絡みつくとんでもない音を背にもう一度ナッちゃんと向き直る
｢……あの人知ってる？｣
｢知らないわ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 569人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月3日 23時
