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日が少しずつ傾き、差し込む光がオレンジ色になりかけた今日この頃。私たちは軽音部の部室で朔間先輩と向き合う形に。
昨日“たのもう！”と明るく突っ込んで行った明星くんは未だに浮かない表情をしたまま
｢……それで。我輩に質問とは一体何かのお。答えてやらん事も無いがお主らはあまり時間がないはずじゃ。使い方はよく考えた方が良いぞ｣
｢ふん。それを承知で伺いたい。何せ転校生からの質問だ｣
｢ほぅ嬢ちゃんの方じゃったか。して、お主は何を求めておるのじゃ？｣
棺桶に座って長い足を組んでいる朔間先輩は魔物と言うに相応しい
そこから醸し出される貫禄に息を飲み、勇気を振り絞って声を上げる
｢……柊Aさんについて教えて下さい。｣
｢っ、なぜお主がその名を、｣
……あぁやっぱり。
昼の衣更くんと同じ反応をした所から見て、氷鷹の言う通り朔間先輩は柊さんについて知っている
｢……佐賀美先生がこの革命に彼女がいれば、と呟いているのを聞きました｣
絶対に聞き出したい。
その一心で先輩の真っ赤な瞳を凝視する
血の様で吸い込まれそうな瞳を見続けてどれくらい経ったのか分からない。
生きてきた中で1番と言えるほど長く感じる沈黙を“…そうかえ”と低い声が引き裂いた
｢＿＿＿＿彼女、……いや
Aは美しい人じゃった｣
艶やかな黒髪に透き通る白い肌
コバルトブルーの瞳に三日月の様な唇
そう。まるで＿＿＿＿＿
｢夜を護る月の様な子じゃ｣
もちろん容姿だけじゃない
人に寄り添う力と、他人の短所さえ長所に変えてしまうような暖かい心を持っていた。
｢我ら五奇人が散った時も彼女は我らを包み込んでくれてのう。周囲は彼女を“女王”などと仰々しく扱ったが、我らにとってはたった1人の大切な、
＿＿＿＿＿大切なお姫様じゃった｣
“皆彼女を心から愛しておった”
そう慈しむように淡々と語る朔間先輩の表情は夕陽に溶けそうな程美しく儚い。
伸ばす手が彼女に届かなくても、伸ばさずにはいられない。そんな様子だ
｢……Aが姿を消したのは本当に突然の事でのう。｣
五奇人が討伐されていた間も彼女は傍に居続けてくれた。
笑いかけてくれた。
でもきっと少しずつ心がすり減っていたんだろう
｢……今度は我らが彼女に寄り添いたいのじゃ。だから我輩も、我輩の同胞や弟、そして
＿＿＿＿＿明星くん。お主も｣
皆Aを探しておる
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作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月3日 23時
