勿忘草の丘 ２.【オリジナル長編物語】

85話 災厄の襲来 ページ40

炎の中で、街の人々が逃げ惑う。

炎に包まれた建物が焼け落ち、逃げ道を塞ぐ。

その中で、幾多もの魔物が人々を殺していく。

人々は何処にも逃れられず、真っ黒な魔物に殺されるのを震えながら待ち続けるしかない。

私から見ればその光景は、まさに地獄そのものだった。

人々は震え上がり、魔物は次々と人を殺す。丸呑みだったり、物理だったり、様々なやり方で。



"敵将"が何処にいるかは、分からない。



我にかえった私は、みんなの無事を確認した。

私が早く来すぎたのか、一矢達はまだ追いついていない。

私は地獄を見て呆然としている事しかできなくて、未だに頭の回転が追いつかない。

すると、視界の隅で突然紗羅がしゃがみこんだ。震えながら、幼子のように泣いている。

紗羅がしゃがんだ理由にすぐ勘づいた雷華さんと世羅は、泣きだす彼女を宥めようとする。

勿論、昨日はあんなに穏やかだった街がたった１日で地獄に豹変しただなんて、私は、今の状況

を判断しながら心を落ち着かせる事だけで精一杯だった。



「また、また"奴"が来たんだ…… どうしよう。私、本当にどうすればいいの………？」

「お、落ち着けよ紗羅。昔も二回くらいあっただろ？ またやっつければいい話さ」

「でも、"奴"だって二回目は凄く強かったんだよ……？」

「"ヴァイス"はあの時消滅したんだ。雷華、紗羅達を頼む。早く化け物を片付けないとな」



世羅は腰に引っ掛けられたハンドガン二丁を取り出し、くるくると回した。みんなを安心させる

ためか、それとも戦闘が好きなだけなのか。割と落ち着いた表情で、口角が上がっている。

雷華さんは小さなため息をつき、珍しく真剣な表情で世羅に対する答えを出す。



「じゃあ、先にこいつらと一緒にさっきの世界に戻してくれないか？」

「勿論そのつもりだ。アレン、頼んだぞ。しばらくしたら連絡送るからな」

「は、はい！ 師匠は今から街の人の避難の援護と、魔物の討伐を？」

「そうだ。後は頼んだぜ！」



世羅はそう言い残すと、燃え盛る火の海の中に飛び込んでいった。

どうか、澪達が無事でいますように。取り残されたみんながそう願っている。

急いでワープゾーンの中に戻る。突然引き返してきた私達に、一矢と勇助は戸惑っていた。



「災厄の襲来…… これで４度目か」



ワープゾーンを歩く３秒間で、雷華さんがそう呟いたのを、私は確かに覚えている。

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キャラの最近つぶやき【２.】編

雷華 「最近暇すぎて百合亜の人形で寅と遊びだす夕食後の自由時間。」

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