勿忘草の丘 ２.【オリジナル長編物語】

75話 お年頃の少年 ページ30

現在の時間は４時２分。まだ５８分も時間がある。

私と勇助は自転車を引きずり出し、ぐるりと方向転換をした。

勇助の表情は、少なからず驚きが混じっている。澪の自転車が無いことに気がついたんだろう。

みんな気づいている。みんな黙っている。

そんな重たい沈黙を破ったのは、さっきまで静かに周囲を視察していた世羅だった。



「全部澪が決めた事なんだ。それに、お前らならいつでも会いに行けるし、大丈夫だろ？」



最初は冷たくて重たい声だったけど、最後の声が私の耳に入る頃には、気まずそうにこちらを見

つめる少年の、不器用で優しい声になっていた。きっと彼は、人を慰める事に慣れていない。

感情を表に出しているはずなのに、出し切れていない部分がある。どこか素直じゃない。

世羅は何か訳があって、何かが少ない。だから暖かい何かを欲しがっている。

気になって、未だに不完全な読心術を使ってしまった。

しかし、世羅の守りは固くて心を読み取れない。

彼は、戦闘能力は異次元並かもしれないけれど、人間としては何処かが欠けている。

紗羅が言った通りだった、のか。



「まだ時間もあるし、何処かで遊ぼうぜ。一矢とAってこの辺りは詳しいよな？」

「うん。家も近いし寄ってくか？ あ、母ちゃんには魔法使いだって言っちゃ駄目だけど……」



一矢はようやく、明日自分が魔法使いになることに気づいたのだった。

他人の勝手な都合で決められた事、家族はその事を何も知らない。

家族がその事を知ったら、きっと猛反対するだろう。なんとしてでも自分の息子を取り返そうと

するだろう。そんな事はさせたくないから、心配させたくないから。自分自身は魔法使いになり

たいから。

こっそり読心術を使ったわけでもない。でも、私にはそう考えている事がすぐに分かった。

心配させたくないと思っているなら、家族に自分の秘密なんて話したりしない。

お年頃の一矢は、自分にとってなんともない事を心配する親を、鬱陶しいと思うんじゃないか。

同じ子供だからか、なんとなく思っていることが分かる。魔女の勘というものだ。

私の場合は例外だから、叔母さんの心がありえないほどファンタジックなだけだったから。

……アレンに、薦められたから。

ほら、またアレンが何か言おうとしてる。



「あ、それなら」

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キャラの最近つぶやき【２.】編

雷華 「最近暇すぎて百合亜の人形で寅と遊びだす夕食後の自由時間。」

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