勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

127話 旅立つことを咎めるように ページ37

楽しみにしていた月曜日は、夏にもかかわらず生憎の大雨。

昨日の入道雲が原因だろうか、それとも何かの予兆なのか。

毎朝やっているニュースの天気予報では、雨は午後に止むはずだし、ワープは私の家でやるつも

りらしいので、延期にはならなかった。

ここまで傘も差さずに走ってきてずぶ濡れになった雷華さんが、「今回の仕事はこの程度で延期

できるほど軽い物じゃないんだぜ。」とまっさらな胸を張る。

なんで紗羅のテレポートで一緒に行かなかったのかはきかないでおこう。

雨に濡れるのが好きって、前に言ってたし。



「ついに俺の剣技を自慢できるぞー！」

「まだ基礎の段階だけどな。もう少し体力つけようぜ」

「でも運動部に入ったらあっちの世界に行けないだろー？」



チビ二人の茶番は置いといて、私は全員揃ったという合図を紗羅に送る。

私のグッジョブの手に気がついた紗羅は、日之影家へ続くゲートを開く。

その中の景色は、数ヶ月前に見たものと同じ淡い珊瑚礁の海の中だった。

足を踏み入れると、その３秒後には眩しくて優しい光が私達を包み込む。

閉じた目を開けば、古惚けた西洋の家と懐かしい人々が出迎えてくれた。

その窓の向こうに目を移す。こっちの街の天気は、夏空が広がる快晴だ。



「Aー！ 会いたかったよ！！」

「澪！？」



会って早々、久しぶりに顔を見た澪が私に抱きついてきた。

最初は驚いたが、よく思い出してみればこんなに長い間合わなかったのは初めての事だ。

だとすれば、彼女だって寂しかっただろう。

なら、今は引き離さずにそのままにしておいてあげよう。

今回の仕事は二手とかに分かれたりするのが多いらしいから。

もう一度確認するが、今回の出動メンバーは日之影家、中学生組(アレン含む)、クラーレさん、

フェアヴァルト家の五つのグループ。

超細かく分けると、私と澪と一矢と勇助とアレンと紗羅と世羅と百合亜さんと雷華さんと知里花

さんとクラーレさんとロックさんとバトラーさんの合計１３人だ。

ルピナスとミリヤさんとアスターさんは、屋敷の方でこちらをサポートするために留守番。

寅は留守番ではなく世羅の腰についているシザーバッグの中。もう人数に数えていない。

そういえば、世羅ってボディバッグも持っていた気がするが、今日は持っていない様子。



「さ、そろそろ行くわよ」

「まずは黒竜の闇により永遠に凍りついた、雪山の麓にある小道まで行こうか……」

「やっぱ長ぇ……」

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