勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

118話 二人だけの秘密共有 ページ28

木曜日の帰り道、私はいつものように一矢と帰る。

最近一矢との距離が近い。本当に近い。

それを少し注意すれば、彼は驚いて私から離れようとする。

私は別に嫌じゃないのに。



「……近い」

「あ、ごめん」

「別にいいけど」



昨日雨が降ったけど、私は折り畳み傘を持って来ていた。それを自慢すると、一矢は何処か寂し

そうな顔をして話題を変えてくる。

今は部活の話をしている。勿論、一矢の怪我の事に関してなんだけれど。

その腕の怪我で陸上部に入れるのか、諦めて文化部に入るつもりなのか。

私は一矢に仮入部の事を聴いていなかったから、そういうのは一切知らない。

その事を一矢に尋ねると、彼は心底悔しそうな顔をして答えた。



「俺、母ちゃんに部活は文化部にしろって言われたんだ」

「そう…… それで、何処の部活？」

「第一希望は情報部」

「情報部なら私も第一希望だけど？」

「マジ！？」



私が答えた瞬間、一矢の固まった表情が緩んだような気がした。

多分、自分が入る部活に同じ班の人間がいた事が嬉しかったんだろう。

私の鞄の中に小さくなって入っている、読心術を使っているであろうアレン氏は、何か私に伝え

たい事があるらしい。

私はアレンの声に聴き耳を立てる。



「いい感じだね〜」

「何が？」

「だから、一矢が情報部に入るって事！」

「それはもちろん嬉しいけど。それが何？」

「もう、Aは鈍いなぁ。これじゃ本当に……」

「……」

「ちょっとA、聴いてるー？」



呆れる程どうでもいい話だったので、私はアレンの会話を切り上げてしまった。

次に一矢と話しているのは、双方の親のこと。

一矢の両親は勇也さんと椿さん。世羅と紗羅の知っている人らしい。

私については知っての通り、父親は他界、母親はクラーレさん。

どうやら私、目以外の顔つきと得意な事以外はほぼ父親似らしく、黒くて癖のない髪、どちらか

というとつり気味の黒目、どこか人見知りで冷静な性格、猫派、甘党……

とにかく親父似の娘らしい。そんなにそっくりだというなら、一度会ってみたいものだ。



「俺は逆かなぁ。髪と目の色と性格は父ちゃんに似たけど」

「それほとんど父親似じゃないの」

「いやいや、顔は母ちゃんに似たんだぜ。美男子だろ？」

「私の場合は父親の顔を見たことないから、美人か分からないんだけど」

「だ、大丈夫だって、Aもカッコいいしイケメンだから！」

「かっこいい？」

「あ」

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・中二病って難しいけどかっこいいんです

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