勿忘草の丘５.【オリジナル長編小説】 (ページ34)

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214話母親の行方ページ34

【勇助視点】

「じゃあ、木ノ葉の代わりに街の周囲の守護、頼んだぜ」

「えぇ。多少荷が増えるけど、特に問題ないわ」

森の入り口で雫さんと分かれ、僕達はふと空を見上げる。

夏の大三角形が煌めく星空の下、ランプの明かりが灯りはじめる商店街の中を、僕達はふらふら

と歩きながら日之影家へ向かっていた。

ついさっきまで、世羅が雫さんと会話していたことを思い出していた。

母さんは大分前から、"あの悪い人達"から街を守るために、周囲に結界を張っていたらしい。

幻の母さんを作った理由は、これだったのかもしれない。

それにしても、僕の本当の母さんは何処に行ってしまったんだろう。さっきの化け物に殺されて

いなければいいけど…… 今は僕の母さんの事よりも、Aさんの救出を優先しなきゃ。

ところで、あの大福みたいな精霊って本当にシロコっていう名前なのかな。

「ルシ…… 紗羅さん、あの大福みたいな精霊の名前、シロコっていうの？」

「えぇ、木漏れ日が大好きなシロコ族よ。白い子達だったからそのまんまシロコっていう総称を

つけたんだけど…… 何処から来たのかは分からないの」

「あの精霊達がシロコ族ってことは…… 生き残っていた白い子自体に名前はあるのかな」

「あるわよ。よく柄の長い柄杓に入りたがるから、エナガっていうの。一応リーダー格ね」

「何のひねりもない名前だね…… もしかして、雷華さんがつけた？」

「正解。らい姉って、あだ名とかをつけるのは得意だからねー。逆に木ノ葉はあっちの世界に憧

れていたから、勇助みたいなあっちの世界の一般的な名前をつけたがってたのよ」

「ふーん……」

母さんって、神様なのにあっちの世界に憧れてたんだね。

話は変わるけど、僕が咄嗟に隠れた最初の物陰、実はロックさんだったみたいなんだ。

どうしよう。物陰と間違えてしまったこと、一応謝っておくべきかな？

「あの、ロックさん…… さっきは急に後ろに隠れたりしてごめんなさい！」

「………え、気にしなくてもいいよ。あれを見れば、誰だって驚くだろうし」

「そ、そうですか。ところで、ロックさんってあだ名なんですね。世羅から聞きました」

「苗字の最初が石に関連しているからね。僕、自分の下の名前が嫌いだったから、１０年くらい

前に出会った雷華にあだ名をつけてもらったんだ」

「え、じゃあ、本名は」

「それは言いたくないな。さ、早く家に帰るよ」

「あ、はいっ！」