貴女に惚れました。【文スト】【男主】

貴女に惚れた23 ページ26

俺の言葉を聞いた瞬間、少年の何かが切れる音が聞こえた。ゆらり、と殺意が立ち上るのが見える様だ。


「…虫けら？父さんが、虫けらだと⁉」


少年の声に呼応する様に、今まで静止していた周りの人間が一斉に銃を構え撃ち始めた。弾を避けていると、ある事に気が付く。…こいつら、人間ではない。


「父さんは！あんな糞爺の下でずっと頑張ってたんだ！なのにあの糞爺は！父さんを侮辱した！」


銃声と同じくらい大きな声で吼える少年の声に耳を傾ける。…父親は、日頃の思いが燻り続けて遂に爆発したんだろう。そして大臣を刺そうとして、俺に取り押さえられた。


「父さんはそのまま帰って来なかった！母さんは心労で死んだ！あんたが殺した！」


「云いがかりだな。あと虫けらは比喩だ。本気にするな」


父親は兎も角、母親が死んだ事で俺に何ら非は無い。…復讐心で家族が死んだ寂しさを覆い隠したのか。


少年が吼える度に、呼応する様に銃声が大きくなる。異能者か、厄介だな。


「死ねよ！」


その言葉と共に、俺の右腕に弾が貫通する。流石の俺でもこの弾幕を避けるのは疲れる。ましてや今は出張帰りだ。体力は普段の半分も無い。


左肩、左腿、右脇腹、右頰。


掠める弾、貫通する弾。着実に、確実に傷は増えていく。


そろそろ死ぬな、俺。

貴女に惚れた24→←貴女に惚れた22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す