貴女に惚れた19 ページ22
首飾りを弄りながら、帰路につく。日は暮れ、月が昇り街を照らしている。ヨコハマの夜は明るい。大通りは昼と同じくらい活気付いているだろう。
かく云う俺は、大通りから外れた裏路地を歩いていた。俺にとってはこちらの方が歩き慣れている。
コツン、コツン、コツン。
裏路地は静まり返っていて、俺の足音だけが響いている。
コツン、コツン、コツン__ジャリ、ジャリ。
自分の他に、足音が聞こえる。慎重に歩いているけれど、隠しきれていない足音が、複数。
俺が歩調を速めれば、背後の足音も速まり、歩調を緩めれば緩まる。一頻りそうして、確信した。…着けられている。それも、足音すら隠せない様な雑魚共に。
少し開けた場所に出た。と同時に背後の気配が俺を取り囲む様に動く。一つ、二つ、三つ………全部で二十、といったところか。舐められたものだな、俺も。
「あんた、鳳鉄幹だな?」
暗闇から現れたのは、意外にも身なりの良い少年だった。浮浪者の類いかと思っていたがどうやら違うらしい。
「そうだ、と云ったどうする?」
「殺せ!」
少年が叫ぶと同時に、小銃を構える音がした。鉄が擦れ合う、独特の音。前も、後ろも、右も、左も、月に照らされて黒光りする銃口が俺を向いていた。
…避けられんな。
静まり返った路地裏に、銃声が鳴り響いた。
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Asterisk@あーちゃん(プロフ) - 『鳳』って、与謝野晶子女史の旧姓ですよね!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
Asterisk@あーちゃん(プロフ) - コメント失礼致します。凄いです、こんな小説を探していました…!主人公が鉄幹さんなんて、凄く素敵です!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
藍斗(プロフ) - 続編希望です! (2018年7月30日 10時) (レス) id: 2f591e73cb (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 1 (2018年7月27日 17時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - 1 (2018年7月27日 13時) (レス) id: 6ed63001fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ペンギン屋 | 作成日時:2018年7月9日 23時