狩られる者。② (ページ29)

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第三章第十九話ページ29

［ゴン目線］

一瞬だった。

Aがアンドレアの背後にまわり、床に押さえつけて頭に銃口を当てるのが。

俺の目には、もう銃口を当てるところしか見えなかった。

「で？」

で？と言ってもっと銃口を押し当てた。

「私は絶望なんてしていません。もうしません。今、私には守りたい人たちがいます。だから死ねません。....死ぬのはアンタだ。」

銃口を頭に押し当てるのをやめて目の前の壁に弾丸を撃つ。
するとその弾丸は壁にあたり、ヒビが入り、そこら一体が粉々になった。この時初めて知った。
これは普通の銃弾ではない、念だ、念で作っているのだと。

ボロボロになった壁の近くで観戦していたお客さんは怖がって逃げていってしまう。

「あの威力をこんな近くで撃ったら....確実死にますねぇ。あ、けどその頭を硬で守ってみたらどうですか？....あ、すみません。念の基礎もまともに知らないアンタが、念の応用技なんて....知りませんよね？」

「....あんた見たいなクズを見てると吐き気がします。不愉快極まりない。顔も見たくない。....ということは死ぬしかないですね。」

ニコッと笑い、Aはもう一回銃口をアンドレアの頭に突き立てた。

アンドレアはさっきの笑みが消え、バタバタとAを振り払おうとするが、Aの力が強すぎて振り払えないでいる。

「さようなら。」

バンっ

アンドレアから離れるAとステージ場に倒れたままのアンドレア。

Aはアンドレアを殺した。

いや、ちょっと待って、よく見るとアンドレアからは血が一滴も出ていない。

あ、けど....

「あのオッサン、漏らしてる....。」

キルアの声と俺の心の声がかぶった。

アンドレアは死ぬのがそうとう怖かったのだろう。
気絶して漏らしていた。

「うわ、汚なっ。自分で処理してくださいよね。」

Aはそれだけ言うとステージの上からおり、立ち去っていった。

「し、勝者！A選手！！」

会場から、一斉に歓声が飛び交った。